2025年9月13日 J2リーグ第29節 藤枝MYFC 対 大分トリニータ

Jリーグ

22分、ロングスローのこぼれ球を大分トリニータの天笠選手が強烈に叩き込んで、先制点を奪った。GKがセーブできないコースへの速くて低い弾道の見事なシュートだった。
先制点を奪われた藤枝MYFC(以下藤枝)は、前半のうちに追いつく。そして試合はそのまま1対1の引き分けで終わるのだが、その藤枝のゴールシーンが印象に残った。

39分、ハーフラインを少し超えた辺りで、ボランチの世瀬選手が戻し気味のパスをCBの楠本選手に送ると、そのパスをダイレクトで右サイドにいた久富選手に繋ぐ。
1試合のうちに何回も見られる、後方部分でのパス回しだ。この時、世瀬→楠本→久富という順序でボールが横移動するが、楠本戦手が時間をかけずにダイレクトプレーで久富選手に回したため、守備のスライドが少し遅れたように見えた。
ボールを受ける久富選手は右足でワントラップしてルックアップする。だがスライドが遅れて対面のマーカーの圧力が少しだけ弱い。久富選手は比較的自由に脚を振れる状況でためらわずに低いクロスを送った。

普通のクロスは、誰かが触ってゴールできるようにゴールのすぐ前に送られるのが普通だが、この時のクロスはペナルティエリアの少し前のゾーンに送られた。ゴールからは遠かった。なので、おそらく久富選手はラストパスのつもりで蹴っていないと思う。
そのクロスを浅倉選手がダイレクトでシュートする。右サイドの斜め後方から来たクロスを右足で巻き込むようにシュートしたボールはカーブしながら右ポスト際のGKのセーブが届かない場所を通過してネットを揺らした。

このゴールだが、守備側にしてみれば、かなり対応に困るゴールだと思う。ペナルティエリアに入るか入らないかの位置にいる相手選手にパスが出される、その行為に対して毎回同じようにハードなマークはつけられないからだ。もちろんマークには行く。十分に危険な位置だから。だが毎回最警戒の密着マークはつけられない。そこにパスが通るのはある程度は仕方がない、だけどそこからは自由にさせないよ、という守り方になると思う。それが間違った対応ではないはずだ。
だが、実際に浅倉選手はゴールを決めた。ダイレクトシュートで。ここがポイントになる。この位置でパスを受ける相手にダイレクトでシュートを打たせないように、DF(もしくはボランチなど)が体を投げ出した守備体勢を取るのは結構難しいことだと思う。ワントラップしたタイミングで間合いをグッと詰めることはできるだろう。しかし、あの位置であの方角から来たボールをダイレクトでシュートされるというのは、守備をする選手の想定範囲に入りにくいプレーだと思う。しかもそのシュートがゴールの枠内に飛んでGKが防げないシュートになった。守備する側には落ち度がないゴールだったと思う。
と、いうことは、この浅倉選手のゴールは、状況さえ揃えば再現性が高いゴールシーンだということが言えないだろうか?

このようなプレーで失点するとなれば、守備側は厳しくタイトにマークするエリアをもう一段階広げなければならないだろう。それは大きな負担を強いられる作業のはずだ。その作業によって、全体的なディフェンス強度が低下してしまう可能性もある。藤枝としてはそれは好ましいことだ。そしてそこを意図的に狙いたい。

いずれにしても、この浅倉選手のゴールには驚いた。「それで点取れたらそりゃ楽だよ」と思ってしまった。そして、浅倉選手はこのように横方向から来るボールをダイレクトでシュートするのが得意だと思う。第27節の愛媛FC戦でもあったが、ゴールの枠を外れたコースからカーブをかけながらギリギリのコースに入れてくるシュートが上手い。
シュートレンジの広さも持っているし、90分間走り切るフィジカルも身につけるようになった。ボールコントロールやドリブルスキルの高さは言うまでもない。どこまでスケールの大きな選手に成長するのか、これからの浅倉選手に期待したい。

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