2023年8月26日 @ニッパツ三ツ沢球技場
17位の横浜FCと首位の横浜FMの一戦、いわゆる横浜ダービーの備忘メモ。
現状の順位から考えて横浜FCの苦戦を予想したが、4-1で横浜FCが快勝した。
先制点は横浜FMが奪う。
開始8分、コーナーキックのボールをニアのヘディングで意図的に軌道を変える。
すると、ゴール前の要所にいた両チーム5、6名の選手の頭上を飛び越えて、アンデルソン選手に
ボールが届く。
見事なセットプレーだった。ほぼフリーのヘディングシュートが決まった。
これは、やはり横浜FMは強いなぁと思った。
実際、その後も横浜FMの方が追加点を奪いそうな展開だった。
しかし、前半のうちに横浜FCが追いつく。
36分、コーナーキックのボールを横浜FMのGK飯倉選手がパンチングでクリアする。
カウンター対応でペナルティーエリア外にポジショニングしていた横浜FCの林選手のもとへ、
そのボールが弾みながら向かってくる。
ダイレクトで右足ボレーを振り抜くと、ボールはシュート回転で右へ動きながらサイドネットを揺らした。
GKが反応できない凄いシュートだった。
前半はそのままのスコアで終了したが、後半に入って横浜FCが先にゴールを奪う。
52分、ゴール前にいた横浜FC伊藤選手に送られたボールをDFがクリアすると、そのボールは距離が出ずに高く上がる。
横浜FCのユーリララ選手が競り合いながらヘディングしたボールが、動き直した伊藤選手のもとへ弾んで来る。
胸トラップからの右足ボレーシュートは、これもGKが反応できないゴールになった。
見事なボレーシュート2発で逆転した横浜FCはその後、オウンゴールと終了間際のカウンターからのダメ押しゴールもあり、4-1で快勝した。
先制されて、追加点も奪われそうな展開ではあったが、2本の素晴らしいボレーシュートが勝負を決めた。
ゴールを奪い合うことで勝敗を決める球技では「シュート」という行為によってゴールが生まれる。
なので、当然だがシュート技術の優劣が勝敗に大きく直結する。
この試合を見ていても、そのことを強く感じさせられた。
「シュートは、その時になったら足を振ったり、頭に当てたりすれば良いだけだ。別に特別なプレーではない」と内心思っていた時期がある。なんてことだ・・・
シュートよりもそこへ至る過程が最も重要で、中盤でのスペシャルなプレーこそがサッカーの本質だと勝手に信じていた時期があったのだ。
ジーコとかプラティニとかバルデラマとか、あっと言うようなスルーパスを操る選手が一番凄い選手だと思っていて、大好きだった。
もちろん、中盤でのクオリティは大切で、サッカーの大事な要素の一つであるのは言うまでもない。
それはそうなのだが、その頃の「中盤こそ全て」という思い込みによって、サッカー観戦の変な癖がついてしまったように思う。
シュートのうまさ、凄さに、今ひとつピンと来ないサッカー観戦者になってしまっているような気がしてしょうがない。
今後、サッカー観戦を重ねる中で、是非「シュート」に対して細やかな発見ができるような観戦者になっていきたいと思う。
今はそのように考えています。
そこで、この試合のボレーシュートによる2ゴールである。
ボレーシュートなので空中に浮いているボールを蹴っているのだが、たぶんプロサッカー選手はこれまでのサッカー人生の中で、地面に接地しているボールを蹴る経験の方が圧倒的に多いと思う。
接地しているボールだったら、インサイド、アウトサイド、インステップなどの様々な部位で自分のイメージ通りのキックをすることが安定的に可能だと思う。プロの選手なら。
それに対してボレーシュートは、そこまで技術的に完成させることが難しいのではないか?
浮いているボールを蹴る、という経験値が誰しも圧倒的に少ないのだと思う。
また、そのようなボールを蹴る場合、人体の構造上、ボールの底面を蹴って上方向へパワーを伝える蹴り方が自然になると思う。
しかし、その蹴り方ではゴールは狙えない。ゴールするためには、ボールが前方へ飛んでいくミートポイントを的確に叩かなければならない。その技術が難しいのだ。
ボレーシュートの場面で思わずボールの下側を叩いてしまって、ゴールのはるか上へシュートを外してしまう場面が多いのはそのためだと思う。
ただし、良いボレーシュートがゴール枠を捉えれば絶大な効果が見込まれる。
まず、ボールスピードが段違いに速い。地面との摩擦がないからだと思う。
また、浮いているボールを蹴る経験が少ないと前述したが、ということはそのようなボールに対応するGKも、同様に経験が少ないということになる。
地面にあるボールがシュートされて飛んで来る。そのような目線での対応は慣れているはずだ。
しかし、空中にあるボールが突然飛んで来る、しかも相当のスピードで。
そのような状況で、GKがボールの軌道を瞬間的にイメージするのは非常に難しいと思う。
人間の反応速度の限界というものもあるが、そもそもそのような状況を数多く経験して対応能力を高めるような機会が少ないと考えられる。
シュートがGKのポジショニングからある程度外れて枠に飛べば、得点の可能性は非常に高くなるだろう。
ボレーシュートが枠を捉えた場合、必然的に守備側は窮地に追い込まれる。
横浜FCのように形勢不利だと思われていたチームでも、状況を一変させてしまう。
現在のサッカーでは、おそらくボレーシュートを意図的に演出するような戦術を採るチームはないと思う。
しかし、サッカーの進化と共にシュート技術の重要性が突き詰められて行き、ボレーシュートありきの戦術が生まれるようなことがあるかもしれない。
思わずそんなことを考えてしまった。
【雑感追記】
アナウンサーの金子勝彦さんが8月20日に亡くなられた。
金子さんと言えば、三菱ダイヤモンドサッカーの実況で深く印象に残っているアナウンサーだ。
小中学生の頃、海外のサッカーを見る機会は本当にこの番組だけだった。
週に1回の放送で試合の前半を見て、次の週に試合の後半を見るという形式だったと思う。
今は見ようと思えば、いつでもサッカーの試合を映像で見ることができる。
あらゆる国のリーグ戦や代表戦が見放題だ。
すごく便利だし、サッカー観戦の知見もどんどん高めることができる。
でも、家の小さなテレビでダイヤモンドサッカーを見ていた時も、今と同じくらい幸せだった。
とにかくダイヤモンドサッカーがあればそれで良かった。
ワールドカップという、何やら凄まじいサッカーの世界大会があるというのもダイヤモンドサッカーで知った。
1978年のワールドカップだったと思う。
ケンペスが凄いなぁという印象と共に、あんなに紙吹雪がピッチに散らばっていてサッカーの邪魔にならないのだろうかと心配になった。
そのダイヤモンドサッカーには、いつも金子さんの実況があった。岡野さんの解説もあった。
テレビの試合で発生している現象を淡々と伝えてくれる実況だった。
聞きやすいのだ。映像の動きとひたすらマッチしているから。
選手の名前も、もちろん正確に伝えてくれる。よくフルネームで伝えてくれてた記憶がある。
「マリオ・アルベルト・ケンペス」とか。
その実況のお声は、いつでも正確に思い出すことができる。
「サッカーを愛する皆さん、ご機嫌いかがでしょうか」
「今日は、ウェンブレースタジアムで行われた一戦・・・」
「ワンツーリターーンッ!!」
謹んでご冥福をお祈りいたします。
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