2025年5月6日 J2リーグ第14節 ベガルタ仙台 対 藤枝MYFC

Jリーグ

相性が良いと言われていたベガルタ仙台(以下仙台)に1対2で負けて2連敗となった。これで複数失点する試合が6試合続いている。失点が多い。藤枝MYFC(以下藤枝)は攻撃に比重を置いているチームなので仕方ないのかもしれない。失点を上回る得点を指向するチームだ。だが、最近の試合では失点が得点を上回っている。それなりに保持率も高く、攻撃の形はできていると思うが決定力が足りない。得点チャンスは演出できているのに最後の「得点する」という作業が不十分だ。思えば開幕戦を見て、シュートの精度が足りないと感じた。ディフェンダーに競り勝ってゴールキーパーの及ばないシュートを決めるプレーが欲しいと思った。その問題点が顕著に表れた試合だったと思う。

以下、この試合で藤枝に対して感じたことを書いてみたい。


 

●決定力が不足している。

前述したように決定力が足りない。決定的な場面はいくつかあったが、決まったのは中川風希選手のヘディングシュート1本だけだった。決めるべき場面で得点できない。それを強く感じた。
そもそも、決定力というのはどのような能力なのだろうか?相手を凌駕するフィジカルやテクニックでゴールをいとも簡単にこじ開ける、という絶対的な能力も当然決定力だろう。でもなかなかそのような能力を持つ選手はいない。いたとしても藤枝がそんな選手を保有することは現実的には考えにくい。その一方で、フィジカルやテクニックは常識的なレベル、しかしチャンスの場面で自分が持っているレベル値を最大限に発揮できる能力、というのも立派な決定力と言えるだろう。そしてそれこそが今藤枝に求められる現実的な能力ではないだろうか。決定的な場面とは、ゴールを奪えるかどうか、ゴールを防げるかどうかの土壇場の場面だ。その土壇場で自分を客観視するかのように状況を把握する。その状況に応じた最適なシュートプレーを選択できる。そして確信を持って自分のレベル値を最大限に開放する。そのような、ある種の異能を持つ選手が必要だと思う。その異能は持って生まれた才能なのか、経験を重ねて獲得するものなのか、それとも練習で身につけられるものなのかはわからない。確立方法の無い幻影のようなものかもしれない。それでもその能力が今の藤枝にはどうしても欲しい。昨シーズン、多くの得点をあげた矢村選手は多分この能力を持っていたと思う。今シーズンの藤枝には今のところ彼のようなストライカーはいない。しかし、その代わりにディフェンダーも含めて多彩な選手が得点している。それはそれで良い傾向だろう。だが、決定力という能力に限定して考えると、今後もいろいろな選手がコンスタントに得点できるかどうかは疑わしくなってしまう。決定力を得点するための絶対的な指標だと考えた場合、それらの選手に「決定力」が無ければ、シーズンを通して一定の得点をあげるような保証は見つけられないからだ。
今後、藤枝が決定力不足を解消するにはいくつかの方法があるだろう。①在籍選手の誰かが何らかの方法で決定力を獲得する。②決定力を保有する選手を他チームから獲得する。③「決定力」を半ば否定する。以上の3つになるだろうか。③については、例えば藤枝が独自の戦略的路線を歩むことで「決定力」自体を必要としなくなる可能性を考慮してのものだ。(そんな可能性があるのだろうか?・・・)いずれにせよ藤枝の場合、後述するように、不安定な守備力がチームに内在するだけに、決定力不足の解消はチームの浮沈を決定する大きな課題である。この課題が開幕戦以来解消できていないように思えて不安でならない。


 

●失点が多い。失点を減らす具体的な施策を講じる必要があると思う。

6試合連続で複数失点を喫しているという事実を見過ごすわけにはいかないと思う。この試合の2失点でもそうだが、失点場面で守備に関与する選手数が足りていないように見える。藤枝の守備は、あたかも、相手の攻撃に対して最小限の緊急補強を施すかのような守備に見えてしまう。攻撃の枝葉の部分までのケアが足りない印象を受ける。だからフィニッシュの場面でのプレッシャーも甘い。最大限の制限をかけるべき場面なのに、だ。サッカーの守備、特に最終ラインでの守備に関して、数の原則は常について回るものだと思う。相手の攻撃者に対して、自チームの守備者の数が少なければ失点の可能性は高まる。(同数、または数が多くても守備の質に問題があればダメだけど)しかし、藤枝は攻撃的サッカーを指向しているのでボランチ、ウイングバックはもちろん、センターバックまで攻撃に参加する場面が普通にある。攻撃していた選手はどうしても守備に戻りにくい。つまり、守備の数の原則を重要視していない。
守備の場面で人数をかけて守り切る、このことを今一度考慮して欲しい。数少ない(今治FC戦は長時間相手が10人だったので実質的には唯一の)無失点試合のいわきFC戦で見せた堅実な5バックの守備が忘れられない。後半開始から始まったいわきFCの猛攻を約20分間見事に守り切ったではないか。あの堅実な時間帯があったから完封勝ちできたのだ。今後、状況によってはブロックを形成して相手を前向きに視認して迎撃する守備も採用して欲しい。典型的なカウンター攻撃を受けてブロックを作れない場面もあるかと思うが、守備ブロックを作る戦術を持ち、重心を低く構えるマインドがあるチームはカウンター攻撃の際にも粘り強く対応できるかと思う。今の藤枝のようなカウンター攻撃に弱い体質も改善できる効果があるのではないだろうか。「それではよく見る普通のチームだ。藤枝らしさがない」となるかもしれない。だが、複数失点が連続している現実を見れば仕方がないと考えてしまうのだ。
個人的には当初の「超、超、超攻撃的サッカー」というスローガンは忘れてしまえばいいと思っている。サッカーは相手チームと対等な立場で、お互いが勝利を目指してプレーすることで成立する。そこで精一杯自分たちのベストを尽くす。相手に応じた対策を考え抜き、勝利のために自分たちの力を最大限に発揮できるサッカーを実行する。その苦心の結果、現場で生み出された自分たちのサッカーこそ優先されるべきだ。紙に書かれた結果の伴なわないスローガンをいつまでも大事にする必要はないと思う。

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