普段はJリーグを見ることが多いが、海外のビッグゲームであるチャンピオンズリーグの決勝戦をテレビで観戦した。パリサンジェルマンFC(以下PSG)対インテルナツィオナーレ・ミラノ(以下インテル)だ。やはりみんな上手い。テレビの画面越しに見ても明らかにそう感じる。ただひたすら、その上手さに感心していたら90分がすぐに終わってしまった。ただ、試合内容というか、サッカーの進め方みたいなものに対して普段見ているJリーグの試合とは異なる点も感じた。ビッグゲーム独特の雰囲気やプレーレベルの高さに圧倒された試合だったが、そういう点でも興味深い試合だった。
以下、この試合で感じたことを書いてみたい。
①サイド攻撃をそれほど重視していないように感じた。
特にPSGの攻撃を見ていてそう感じた。サイドライン際でウイングが1対1を仕掛けてからクロスを入れる、という攻撃をあまりしない。ウイングがライン際でパスを受けることはある。だが、そこからライン際をまっすぐドリブルで前進して長めのクロスをゴール前に供給しようとする選択が少ない、パスを受けてからの第一選択がゴール方向へのドリブルである。あるいは、そもそもライン際にポジショニングしないでライン際でのプレーを捨てていることも多い。なので、ボールを保持すると簡単にペナルティエリア内に入ってくる。エリア内、もしくはその近辺でのプレー頻度がめちゃくちゃ高い。PSGの自陣から攻め上がる攻撃の場合でも最終的にはペナルティエリアの横幅に収束されるような攻撃が多い。攻撃の矢印がサイド方向へ向かうことが少ない。実際にPSGの得点シーンはそのような攻撃パターンだったと思う。サイドライン際から長距離のクロスを上げて中央で合わせた得点はなかった。Jリーグでは長距離クロスからの得点が一定数見られるのでPSGの攻撃が興味深かった。確かに、考えてみればライン際から送られる長いクロスを中央で合わせて得点するプレーは難易度が高くて成功確率が低いのかもしれない。成功確率を重視するならば、PSGのようにペナルティエリアの横幅を基準にした攻撃になるのだろう。ただし、そういう攻撃ができるのも選手個々の能力が高いからだと思う。とにかくドリブルで移動する能力が高い。まるでマークにつく相手がいないかのように滑らかに動く。マーカーを剥がす能力が高い。Jリーグではマーカーを剥がそうとするドリブルの1歩目の持ち出しで相手に体を合わせられてドリブルが難航するケースがある。しかし、PSGの各選手はその1歩目の持ちだしで確実に相手を剥がすことができる。だから自分のイメージ通りの形でドリブルで推進ができて、その結果の第一選択がゴール方向へ向かう攻撃になるのだと思う。
②味方との連携プレーが正確である。パスが自然に繋がる。そのプレーを相手の圧力がかかった狭いスペースで実行できる。
これも特にPSGに対して感じたが、パスの出し手とパスの受け手の連携が正確である。正確であり自然さを感じる。プレーに無理がないという感じだろうか。当たり前だがパスの出し手と受け手は別個の人間である。だからこそ、普通にパスミスが生じる。パスが出るタイミング、パスの強さ、パスの軌道、などパスの成功に関わる要素を別個の人間同士が共有することを完璧にできないからだ。同時に、パスの質、トラップの質、あるいは動き出しの質などの技術的要素をお互いにミスなく遂行しなければならない。それも簡単ではない。だが、PSGのパス連携には、そのような共同作業特有の難しさを感じない。出し手が味方へのパスを意図する、受け手が動き出す、出し手がパスを出す、受け手がパスを受ける、その一連のプレーが、まるで全く同じ意思を持つ同一人物の人間同士で行われているかのようである。パスが当然のように繋がっていく。そのプレーがマークの厳しい相手陣地のペナルティエリア内でもやすやすと完結されていく。だから多くの得点がPSGに生まれたのだと思う。
③インテルのサイド攻撃は効果的だった。
①でPSGがサイド攻撃を重視しない攻撃で得点を重ねたと書いた。しかし、一方のインテルについてはサイド攻撃が有効であったと思う。もしかすると、インテルもPSGと同様にサイドを使って外回りに攻撃するよりも中央のレーンを攻略したかったのかもしれない。しかし、少なくともこの試合ではPSGのようなドリブル、パスのクオリティを見せながら、PSGのようにゴールへ直接的に迫る攻撃が出せなかった。それはPSGの3トップのハイプレス、中盤の3選手の厳しいプレッシャーが機能していたせいでもあるだろう。しかし、それでもこの試合の中でサイド攻撃によってPSGを慌てさせる場面があった。特に前半の27分から37分の10分間で4回、連続して効果的なサイド攻撃を行っている。インテルのサイドプレーヤーがサイドライン際でボールを保持してPSGのサイドバックに対面守備をさせる。その状況でサイドバックの裏のスペースを有効に使ってゴールに迫る場面があった。PSGの3人の中盤、4人の最終ラインを攻略するためには、やはりサイドへボールを運んでPSGの守備に横幅を作らせることが必要だったと思う。
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