2025年5月3日 J2リーグ第13節 藤枝MYFC 対 水戸ホーリーホック

Jリーグ

前節の藤枝MYFC(以下藤枝)は、手数をかけない縦に速い攻撃を駆使して勝利した。いつもとは一味違うサッカーを披露する器用さを見せたと思う。なので、今節も同じような攻撃で行くのではないか、と考えていた。しかし、そのような縦に速い攻撃はあまり見られなかった。相手あっての戦術なので水戸ホーリーホック(以下水戸)に対しては前節のようなサッカーを選択しなかった、もしくは選択できなかった、ということなのだろう。どちらにしても今節の藤枝の攻撃には勢いを感じなかった。ボールを保持しているが攻めあぐねている時間が多く、水戸の守備を崩し切れていない。前節が前節だっただけに物足りなさを強く感じた。しかし、改めて試合を見直してみると、悪い面ばかりでもなく、いくつかの有効な攻撃はできていた。ただ、有効な攻撃に徹し切ることができず、自らの攻撃にブレーキをかけてしまうような場面があったと思う。結果的に、水戸の守備を崩すことができなかったのは残念だった。

以下、この試合で藤枝に対して感じたことを書いてみたい。


 

〇特に前半は、水戸の守備ラインを攻略する場面が何回か見られた。良い形でアタッキングサードに侵入することができていた。

藤枝は3-4-2-1システム、水戸は4-4-2システムを採用しているチームで、藤枝がビルドアップに臨む時に水戸と相対する基本的な布陣は以下のようになる。

藤枝は3人のセンターバックだが右センターバックの中川選手が高い位置に張り出している。そこを水戸の左サイドハーフの津久井選手がマークする。残り2人のセンターバックには水戸の2トップ2人がマークする。ゴールキーパーの北村選手がマークされないので彼の数的優位性を活かして藤枝はビルドアップを行う。ただ、あくまでも上図は「マークする選手同士でペアを作ってください」と言われた場合の極めて基本的な布陣であって、選手たちは縦横無尽に動くし、マークの受け渡しは頻繁に行われる。しかし、大まかな形として藤枝はこのような選手の配置を基本にして水戸の守備網を突破しようとする。そして、フリーマンの北村選手からビルドアップが始まる場合、ゴールという目的を達成するために水戸の4-4-2の守備ラインを順番に突破する必要がある。(あくまでも後ろのポジションから順序良くボールをつないでいくとした場合だが、藤枝はそのように行儀よくビルドアップする場合が多い)
ここで、突破すると書いたが「突破」とはドリブルによる突破にせよ、パスによる突破にせよ水戸の各守備ラインの「裏を取る」ことに等しいと思う。裏を取れれば突破したと言えるだろう。そういう意味で、この試合、藤枝が水戸の守備ラインの裏を取れた場面は散見された。例えば下の図は14分の場面である。

藤枝のビルドアップ、最終ラインでボールを回し北村選手がボール保持した瞬間、浅倉選手が最終ラインの位置に下りて来てパスを呼び込む。その際、浅倉選手をマークしていた水戸の山崎選手も同調して浅倉選手を追う。浅倉選手はワンタッチで楠本選手にボールを戻す。その時の状況が上図であるが、浅倉選手と山崎選手がいたスペースに金子選手が下りて来て楠本選手からの縦パスを受けている。つまりこの瞬間、中盤の4人の守備ラインの裏を取ることにほぼ成功している。この後、金子選手→鈴木選手→シマブク選手→千葉選手とボールが渡り、最終的に千葉選手のシュートは鷹啄選手のブロックで止められてしまった。だが、中盤の守備ラインの裏取りに成功した藤枝が水戸の最終ラインに脅威を与えたのは確かだった。4-4-2のきちんとしたラインを敷いてくる水戸の守備ラインの裏を取るのは簡単ではない。特に4人が並んだラインを前にするとパスコースがあまり無い。ドリブルで単独突破するのはもっと難しいだろう。だが、この場面のように「強制的に」水戸の守備ラインの並びを不均衡にしてしまえば裏を取ることは可能だ。
この試合では他にも22分の場面や35分の場面など、同様のコンビプレーで守備ラインの裏を取ることに成功している。整った守備ラインの裏を取ることは難しい。しかし、ボールを奪うため前に出てくる、あるいは敵選手に同調するランニングをするような時にはラインが乱れる。その時がチャンスである。通常、相手の裏を取る場合には、相手の裏側に走り込みパスを受ける、あるいは無理やり相手の裏にボールを持ち込むことが必要だが、相手が前に来てくれればその労力は大きく軽減される。相手が自ら前に出る動きをしてくれることで、相対的に裏を取る動きが完成するからだ。ただ、藤枝がそのようなチャンスで守備ラインの裏を徹底して狙っていたかと言うと、そうではなかった。チャンスがありながら裏を取るプレーを選択しないで、安易な横パスやバックパスに流れてしまう場面もいくつか見られた。相手の嫌がるプレーは徹底して突くべきである。確かに横、もしくは後方のフリーの味方にパスを繋げば安全ではある。だが大きな進展はない。チャンスを逃したデメリットの方が大きいだろう。サッカーにおける攻撃とは極論を言えば「裏を取る」行為の連続だと言えるとも思う。ある選手が裏を取るための動きをしているのに、別の選手はその動きを感じていない。または、相手の動きで既に裏を取っている状況なのに、それを感じていない。そのような相手を助けるプレーをすることが無いように、チーム内で意識の統一を図って欲しいと思う。


 

●中盤の守備ラインの裏は取れていたが、最終ラインを攻略してゴールを決められなかった。

中盤において相手の守備ラインの裏を取った場合、残るは最終ラインの攻略である。だが、この攻略が最後までできなかった。この部分にもう少しの思い切りと精度が欲しいと思った。この局面は大きなチャンスであると同時に、難しい局面だと思う。思い切りを重視して精度が低くなってはゴールを奪えない。かといって精度を求める余りに、攻撃を逡巡して相手に時間を与えることはできない。そのわずかな時間で、最終ラインはポジションを整え、裏を取ったはずの中盤の守備者は瞬時に戻って来る。簡単な作業ではない。しかしそれでも、後半になって水戸が守備ブロックを引いて構えてしまう前に、最終ラインを攻略したかった。それまでに1点でも取りたかった。中盤で相手の裏を取った勢いを殺すことなく、精度の高いシュートでフィニッシュする。そのプレーが向上すれば、今後得点数は伸びてくるはずだ。


 

●マーキングのミスで安易な失点をしてしまった。

1失点目の場面では、守備側の藤枝が3対2の数的有利な状況だった。しかし、相手へのマーキングが前がかりになり、ファーサイドへ回り込んで来た水戸の渡邉選手を完全にフリーにしてしまっている。スライドする動きで適切にマークを受け持つことができなかった。これは非常に痛い守備のミスだと思う。このままでは今後も同様の場面で安易に失点してしまうのではないか?そのような不安を覚えてしまった。

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