2025年4月13日 J2リーグ第9節 藤枝MYFC 対 ジェフユナイテッド市原・千葉

Jリーグ

藤枝MYFC(以下藤枝)が、現在首位に立つジェフユナイテッド市原・千葉(以下千葉)に敗れた。2対3のスコアだった。藤枝は立ち上がりの4分に先制点を奪われてから約10分間隔で連続失点を喰らい、合計で3失点してしまう。その後、前半のうちに2点を取り返して後半も攻勢に出たが、追いつけなかった。天気は本降りの雨。しかし、雨の冷たさを全く感じさせない熱い試合展開だった。そんな試合でも終わってみれば敗戦の現実が残るわけであり、やはり悔しい。多少の失点は想定内、というのが藤枝のサッカーかもしれないが1試合で3失点するというのは、やっぱり致命的だ。その時点で勝ち点3は遠い存在になってしまう。「失点を上回る得点を奪って勝利する」というポリシーのサッカーにはロマンがある。同時にリスクもある。今節では残念ながらリスクの方がクローズアップされてしまった。ロマンを追い求める作業は当然必要だが、リスクに備える作業も同じぐらい重要だと思う。今節の3失点の経験をプラスに作用させて、今後の試合で少しでも失点を減らしていって欲しい。藤枝らしいサッカーだった、意地を見せた、で終わらせないようにして欲しいと思う。

以下、この試合で藤枝に対して感じたことを書いてみたい。

 


 

●千葉の特徴的な攻撃によって組織的な守備が機能しなくなった。その結果、相手に主導権を持たれたまま、藤枝の最終ラインが多くの決定的場面に晒され続けた。

4分の失点の場面、藤枝の右サイドを椿選手に突破されて、最後はゴールの真正面からカルリーニョス選手にまるでPKを蹴られるようにゴールを決められた。完全に藤枝の守備が崩されてしまった。千葉のシュート練習を見せられるようなショッキングな失点だった。なぜこんな形になってしまったのだろうか?失点場面を改めて見返してみると、千葉の攻撃はボール保持者、つまりパスの出し手を極力フォローしない攻撃だと感じた。攻撃のためのパスを出す味方はとりあえず放っておいて、自分はパスを受けるために準備して動き出そう、そしてパスが来たら有利な状況で決定的な仕事をしよう。そう考えている攻撃だと思う。

下図は千葉の先制点の場面、サイドを突破する椿選手に横山選手がパスを出した瞬間の状況である。

パスを出した時の横山選手は孤立している。もし横山選手が最初からロングボールを前方に放り込むような局面だったら、この孤立もあるだろう。しかし、そのようなつもりはなかっただろうし、そうしてもいない。一応、後ろ方向にサイドバックの日高選手、横方向に田口選手がいてくれてるが、横山選手の周辺円の中には味方のフォローが少ない。他の攻撃的な選手は遠くの方で、機を伺いながら準備している状況である。だが、一方の藤枝の選手は円内のゾーンに多く見られる。そして印象的なのが、久富、世瀬、杉田の3選手が横山選手のパス1本でまとめて追い越されて無力化していることだ。おそらく、普通の試合ならボールホルダーをフォローしようとする相手選手が近くに寄っていて、この3人の選手それぞれがそのフォロワーをマークできていたと思う。そうした場合、ボールホルダーの周辺は敵味方の密度が高い状況になるだろう。すると今回の椿選手へのパスのような見通しの良いパスは出しにくい状況になる。千葉はそのような状況を回避したかったのだと思う。なおかつ相手の中盤の守備者を無力化しようと意図したはずだ。そうして、攻撃の選手の能力を最大限に活かせる戦術を採った。しかし、対する藤枝は、いつもと同じ感覚の守備対応で試合に入ってしまったのではないだろうか。16分の2失点目も田口選手からサイドへ開いた石川選手へのパスがやや似たような状況だった。そして、3失点目の鳥海選手からカルリーニョス選手へのパスも、下図のような類似した状況だった。

鳥海選手はやはり孤立しながらパスを出している。よくあるロングボールではなく、確実に味方へ繋ぐための縦パスを出している。周辺円の中にはやはり藤枝の選手が多く千葉の選手が少ない。そして、ここでも千葉、世瀬、杉田の3選手が1本のパスで追い越されてしまっている。このパスを受けたカルリーニョス選手は森選手のチェックを外してサイドの椿選手へパスを繋ぎ、椿選手からのクロスを石川選手がゴール前をファーへ流れながらボレーで決めた。前線でパスを受ける千葉の選手たちは、ただでさえ攻撃能力が高いメンバーだ。そこに打ち合わせ通りの確信的な力強い動きが加わり、最前線で決定的なプレーができている。全てのゴールシーンで藤枝の最終ラインとの違いができてしまっていたと思う。このような千葉の特徴的な攻撃の繰り返しで、藤枝は前半立て続けに失点を重ねてしまった。


 

●失点して悪い流れになった。その流れを修正できずダメージが拡大していってしまった。

千葉の攻撃は見事だと思うが、逆に見ると藤枝がこの流れを止められなかったのが残念だった。失点場面を藤枝の選手の気持ちになって考えてみたい。最初の失点では守備対応のミスというよりは千葉の個の力で失点した、という感覚が強かったのではないか。縦への速さに気をつけようという意識になったと思う。相手を監視できていないわけではないので、基本的にこのままで、ただし守備の重心はやや後ろに置いて・・・というような意識共有だったのだろうか?そして2失点目でもやはり千葉の個の力を感じさせられる。ボールが動く先の相手選手に仕事をされている、という事象は意識共有していると思う。この2失点目は一見普通のサイド攻撃で、藤枝の守備陣は違和感みたいなものを感じにくかったかと思われる。だが、できればここで、もっとできれば1失点目で、中盤の守備を無力化させながらアタッキングサードにいきなり侵入して来る攻撃に対して、効果的な対応策を立ち上げて欲しかった。少なくとも2失点以内に収めて欲しかった。試合の真っ最中に相手の狙いを見極めて、対応策を即興で決断するのは物凄く難しいだろう。それが安定してできれば苦労はしない。ただ、この試合では千葉の狙いによって、守備に関与できないように仕向けられたポジションがあったはずだ。なぜ守備に関与できていないのか?その疑問を大事にして問題点の解消を図ることで、少しは事態を好転させられたのではないだろうか?未練がましく素人考えでそう思った。

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