試合の終盤、大分トリニータ(以下大分)に得点を許して藤枝MYFC(以下藤枝)は敗色濃厚だったが、アディショナルタイムに起死回生の同点ゴール。なんとか引き分けに持ち込み、直近5試合で負けなしとなった。負けないムードを維持するという意味では良かったが、試合自体は良い点もあり悪い点もあり、という内容だったと思う。また、大分にはこの試合までの過去6戦の対戦成績で全敗という相性の悪さがあった。6戦全敗というと、もう「相性」という言葉では処理できないような気がする。大分は藤枝に勝てる戦い方を実行できるチームなのではないか?そんな視点を中心にして今節を振り返ろうと思う。
以下、この試合を観戦して藤枝に対して感じたことを書いてみたい。
●大分の選手が藤枝のボールを奪い、そのまま前を向いてフリーになる「悪い奪われ方」で失点、あるいはピンチになる場面があった。
〇少ないタッチ、小気味よいリズムでたくさんのパスを交換して推進していく攻撃が良かった。
〇ボランチの世瀬選手が長身のため、ヘディングで競り勝てることが多い。
〇再び中村選手が劇的なヘディングシュートを決めた。
大雑把な感想になってしまうが、藤枝としては悪くない試合だった。前節の良い状態を維持していたと思う。遅攻と速攻を使い分け、全般的に主導権を握り、シュート数も相手より多い。ただ「悪い奪われ方」をして相手にいくつかのチャンスを与えてしまう。結局、このことでペースを握り切れず、最高の結果が得られなかった試合だったのではないか。
17:36、千葉選手が中盤で孤立してボールロストする。すかさず大分が伊佐選手に縦パスを当てるとポストプレーから有馬選手が中央を突破。決定的な場面になりかける。だが、シマブク選手が戻ってシュートブロックした。20:32には森選手がドリブルで持ち上がったところでプレッシャーを受けて奪われる。ここでは有馬選手への縦パスは通らなかったが、やはりピンチになりかけた。
34:15、藤枝のスローインからのルーズボールを大分が前向きにカットすると、勢いを持って右サイドへ展開する。数的不利になった藤枝はゴールマウスを横切る危ないクロスを入れられてしまう。
大分の攻撃を見ていて感じるが、このような、大分にとっての「良い奪い方」をした時の集中力、思い切り、連動性が凄い。ハイプレスからのショートカウンターも得意だろうが、ある程度の距離があるミドルカウンターが非常に鋭い。悪い奪われ方をした藤枝が「まずい!」と思って切り替えるパワーよりも、良い奪い方をした大分が「ここだ!」と思って切り替えるパワーの方が上回っている。上記の場面ではそのような印象を持った。
攻撃に比重を置きつつ、一人ひとりがボールを保持する機会の多い藤枝は、ボールロストした時の守備への切り替えの不十分さが弱点だと思う。つまり、大分のストロングと藤枝の弱点ががっちりと嚙み合ってしまう。それが「相性」の中身ではないだろうか。
ただ、藤枝も従来の弱点を克服しつつあると思う。藤枝の守備の切り替えが大分のカウンターパワーを抑え込む場面も散見されたのだ。
42:25、悪い奪われ方をしたが、シマブク選手がパスの受け手に寄せてボールを奪い返した。
73:19には浅倉選手のトラップが大きくなり奪われる。しかし、浅倉選手はすかさず相手に絡んでスピードに乗ることを阻止した。ファウルになってしまったがカウンターを発動させなかった。
79:30、浅倉選手がドリブルでバランスを崩してボールロストすると、ボールを奪った清武選手に前田選手が、清武選手からパスを受けた有馬選手には浅倉選手が厳しくチェックに行き、同じくカウンターを許さなかった。
藤枝は前節あたりから、ボールロストした際の守備の切り替えの速さ、ファーストディフェンスの強度が向上してきたように思う。この試合の序盤には大分の強力な武器に圧倒された場面もあったが、徐々に藤枝がこの成長部分を発揮するようになった。
大分との相性の悪さを克服したように見えた藤枝だが、終盤に痛い失点をしてしまう。右センターバックの中村選手からのロングボールが相手に届くミスキックになってしまう。すると茂選手がすかさず中村選手の裏のスペースへロングボールを蹴り返す。そのボールを受けた木許選手がタッチライン際から中央へグラウンダーのクロスを送る。走り込んだ鮎川選手が右足のアウトでダイレクトに合わせ、先制点を奪った。この失点場面も藤枝が悪い奪われ方をしているが、自陣の深いエリアだったので大分が鋭いカウンターを発動させることはできていない。その代わりに藤枝の別の弱点である右センターバックの裏スペースを使っている。しかし、藤枝もセンターバックの森選手がスライドしてカバーし、更にボランチの世瀬選手が降りてきて最終ラインに加わり対応している。ボールホルダーとゴール前に走り込んだ選手をフリーにしてはいなかったのだ。だが、クロスを入れられ、シュートを打たれてしまった。対応できていただけに勿体ない失点だった。結局は、ファーストディフェンスだろうが、フィニッシュのディフェンスだろうが、するべきことをしなければ悪い結果になってしまう。それがサッカーの怖さだと思う。
51分、最終ラインの森選手からパスを繋いで相手のプレスを空転させて攻め込んだ。【森→中川→世瀬→森→シマブク→森→杉田→シマブク→金子→ディアマンカ】の各選手の順で3タッチ以下のパスを繋ぎ、最後はディアマンカ選手がクロスを上げた。また、66分には久富選手のスローインから【浅倉→杉田→浅倉→千葉→浅倉→杉田】と全てダイレクトパスで大分の守備陣を突破した。このような相手が対応できない速いリズムのパス交換は、今後も頻繁に攻撃に取り入れてもらいたい。強固な守備を打開する有力な手段だと思う。
ボランチの位置に182センチの世瀬選手がいることで、高いボールの競り合いが有利になっている。これは大きいと思う。この試合でも、2:55、21:16、46:11、52:09などの場面でハイボールをはね返す、競り勝つ、あるいはマイボールにするプレーがあった。センターバックの前、アタッカーの後ろで世瀬選手が競り合いに勝てることは試合のペースを握る上でアドバンテージになっている。
前々節のヴァンフォーレ甲府戦で劇的同点弾を決めた中村選手が、同じような劇的同点弾を再び決めてしまった。またもヘディングでだ。折り返しのボールをゴール前に送った、という見方もできると思うが、個人的にはサイドネットを狙ったシュートだと思っている。前々節の彼のゴールを見て、落下地点の見極め、インパクトのタイミングを掴む能力が高いのではないか?そうだといいな・・・と期待していたが、もう、そうに違いない。敵味方が密集している中でいち早く落下地点に入り競り勝つ。その力は間違いなくあるだろう。そして2つのゴールは、その弾道が特異だ。前々節では思い切り叩きつけてバウンドしたボールが急角度で跳ね上がり、ゴール内部の天井部分に食い込む弾道。そして今節が角度のほとんど無いファーサイドからゴールキーパーの眼前をゴールラインとほぼ平行に飛んで行くような弾道だった。プロのキーパーなら、繰り返しセービング練習ができるようなシュートに対する反応は極限まで研ぎ澄まされている。しかし、中村選手の2つのシュートに対するゴールキーパーの対応を見ると、どの引き出しのセービング技術を使うべきかわからないまま体を動かしているようなぎこちなさを感じる。そのどちらも、ゴールキーパーが普段の練習であまり体験できないような弾道だからだろう。もう少し長い時間、中村選手のプレーを見てみたい。得点が欲しい時のパワープレー要員では少しもったいない気もする。
これで、今シーズンの藤枝のヘディングでのゴール数は3になった。6試合終わって8得点中3ゴールだ。昨シーズンの38得点中、ヘディングでのゴール数は同じく3だった。今シーズン、このままヘディングゴールが伸びていけば総得点も伸びて、同時に勝ち点も伸びていくはずである。是非、チームとしてヘディングのゴールを追求して欲しいと思う。もちろん、脚を振ってのゴールが主要なゴールになるだろう。だが、シュートの過程で発生する動作、立ち脚を踏み込み、蹴り脚を振り上げ振り下ろす、というわずかな時間にプロのディフェンダーはブロックの脚を伸ばし、ゴールキーパーは体勢を整えてシュートに対応する。だが、ヘディングはディフェンダーに競り勝って先に頭に当ててしまえば、普通ブロックはできない。そしてゴールキーパーは突然頭に当たって方向を変えて飛んで来るシュートに反応することが難しい。準備動作が取りにくいからだ。
是非、ヘディングでのゴールをチーム内で重要視して、研究して、鍛錬して頂きたい。そしてヘディングゴールを量産することで、藤枝の攻撃スタイルを良い方向に刷新して欲しいと思う。
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