開幕戦こそ敗れるも、その後の3試合を負けなしで乗り切っていた藤枝MYFC(以下藤枝)が、2-0でいわきFC(以下いわき)に快勝した。これで第2節から今節までの4試合は、引分け、勝ち、引分け、勝ち、で推移しており悪くない状況である。まだシーズンは始まったばかりで、今後調子を崩してしまう時期もあると思うが、少なくとも現時点でチームとしての方向性は明確に整理されているのではないだろうか。今節を観戦してそのような印象を持った。
以下、この試合で藤枝に対して感じたことを書いてみたい。
〇前節の試合で、相手のボール保持者、またはパスの受け手に対する寄せの甘さを感じたが、今節では修正されていると感じた。
〇ポゼッションをベースにした遅攻とロングボールをベースにした速攻を柔軟に使い分けている。
〇遅攻、速攻それぞれの場面で、攻撃から守備への切り替えが的確に行われている。
〇センターバック、およびウイングバックの5名による最終ラインが守備で健闘していた。
〇後半に選手が交代してもチーム力を維持できている。
〇ディアマンカ選手が相手ディフェンダーとの攻防において、うまさを発揮するようになってきた。
前節を観戦して、相手のボール保持者に対する寄せの甘さ、およびパスの受け手へのマークの甘さを感じた。その結果、相手のプレーを制限できずに連続してパスを通される場面があったが、この試合では改善が感じられた。
20:15には藤枝の右サイドで、いわきのパスワークに対して厳しく喰らい付く。最終的にはファウルを犯してしまったが、後手を踏んでパスワークに遅れを取ることなく、相手を追い詰めるハードワークを見せた。また、51:48には左サイドで、ボールホルダーにシマブク選手が、パスを受けようと走り込む相手選手には金子選手が、プレッシャーをかけて攻撃を遅らせている。その他にも同様の場面が見られ、相手にかけるプレッシャーは全般的に前節よりも強かったと思う。
ただ、90分を通してそのようなハードワークが有効に作用したわけではなかった。特に、後半開始からの20分程度は、いわきのハードワークが藤枝を上回っており、ボールホルダーからパスを受けようとするいわきの選手の走力が藤枝の走力を上回っていた時間帯があった。その時間帯は危険なエリアで相手を捕まえ切れず、クロスを上げられたり中央を突破されかけたりしている。もっとも、90分間常に相手の走力を上回ることは難しい。これは今後の課題でもあろうが、そのような時にどう対応するかが大事だと思う。
ゴールキーパーやディフェンスラインからじっくりとパスを繋いで相手ゴールに迫っていく遅攻と、ロングボールを前線に送る速攻がバランス良く混合していると思う。
6:00の場面、遅攻で攻めていると思ったら、6:47でディアマンカ選手へロングボールを蹴る。ゴールキーパーがクリアしたが、そのクリアボールを世瀬選手がカットして惜しいロングシュートを放った。また、15:30にも、それまで実施していた遅攻でボールを奪われてピンチになりかける。そのピンチを脱してマイボールにすると、今度は一転してロングボールをディアマンカ選手に送った。そして先制点に結びつけた。
以前の藤枝は基本的には、丁寧にボールを繋いでじっくり攻撃するプランを主に採用していた。そこで相手のプレスを受けたりして行き詰まると、初めてロングボールを使用する。そのようなパターンが多かった。しかし今は、繋ぐ遅攻とロングボールの速攻が混然一体となっている。あたかも全くの気まぐれで使い分けているかのようだ。ただ、そこに疑問やストレスを感じることはない。むしろ異なる攻撃方法がランダムなリズムで出現するのが面白い。逆に相手にとっては好ましくないことだと思う。対応方法を頻繁に変える必要があるからだ。この、相手が戸惑うランダムなリズムの共有もチーム力の一つではないだろうか。
サッカーでは攻撃から守備、あるいは守備から攻撃への切り替えの場面、トランジションと呼ばれる場面が重要視されている。このどっちつかずの場面で相手を上回ることが求められている。前節で、ロングボール攻撃が防がれて相手にボールを奪われた時に、再度ボールを奪い返す守備の切り替えが機能していると感じた。ただ、遅攻でボールを奪われて守備に切り替える時の対応に関しては、不十分なものを感じていた。遅攻が失敗してボールを失った場合、比較的自ゴールに近いエリアで相手にボール保持を許してしまう場合が多い。そのため、遅攻からの守備への切り替えは一層重要になると思う。
今節ではその点に改善の跡が見られた。9:08に遅攻でボールを失った時、ピンチになりかけたが、金子選手がボールホルダーに素早くプレッシャーをかけて相手の攻撃の拡散を防いだ。同様のプレーが26:54、31:52などの場面でも見られる。
この守備への切り替えで、ファーストディフェンダーとして奮闘していたのが金子選手だ。この試合では得点のプレーがやはり注目されるが、相手の攻撃の拡散を初期段階で食い止めるために走り、体を張っていたプレーも目立っていた。
後半開始から約20分間、相手の走力に押されて劣勢になったと前述した。その間にいわきの連続する攻撃を浴び続けた。やはり相手のパスの出し手と受け手に圧力をかけられなければ、そうなってしまう。とは言うものの、90分の間にはそういう時間帯がやってくる。大切なのは、その時間帯を乗り切ることだ。今節の勝因の一つは、この時間帯を守備で耐え切ったことだと思う。3人のセンターバックと2人のウイングバックが5バックの最終ラインを形成して、相手の集中攻撃を防ぎ続けた。
まず46:20には中央突破の攻撃を中川選手、シマブク選手、ボランチの杉田選手の3人でストップした。50:07に左クロスをシマブク選手が体を巧みに使って防ぎ、50:46、51:07と連続して右クロスを川上選手がヘッドでクリア。続いて53:15には右クロスに久富選手が相手と競り合って自由にプレーさせない。59:10では、いわきの谷村選手の中央突破を森選手がカット。64:55には右クロスに合わせた谷村選手を久富選手と川上選手が挟み込み、ヘディングシュートをミスさせた。これらの集中した最終ラインの守備が本当に見事だった。この試合のような最終ラインがあれば、崩れる試合になることはないと思う。
藤枝が自分達の攻撃的なサッカーを語る時、「3点取られても4点を・・・」という話になることがあるが、個人的には3点取られるような試合は見たくない。ゴールという熱狂的なシーンを生む攻撃は確かに好きだが、ひたむきにゴールを守り続ける守備も同じぐらいに好きだ。なので、応援するチームの失点シーンは見たくない。現に今節、これだけの守備を見せてくれたではないか。「無失点に抑えた上で4点、5点を・・・」という攻撃的サッカーを目指して欲しいと思う。
この試合の交代選手は5人だったが、スタメンの選手と交代してチーム力が落ちてしまうことはなかった。それは、以下の5人がそれぞれの武器を持っているからだと思う。
梶川選手は、相手から圧力を受けている場所に顔を出して、ボールをその場所から解放してくれる。豊富な運動量があり、ボールを受け、動かし、出す技術が高い。アンデルソン選手は体が強く、多少アバウトなボールでもマイボールにしてくれる。ハイボールではなく低いボールの縦パスの受け手として適性があると思う。後半、みんなが疲労でラインを押し上げにくい状況でも、そういう縦パスを受けて、推進力あるドリブルを駆使して独力で相手ゴールを脅かすことができる。浅倉選手は、相手ゴールに近いエリアでボールキープしながら決定的な仕事ができる高いテクニックを持っている。ゴール前で違いを作れる選手だ。中村選手は、前節で劇的なヘディングシュートを決めたように空中戦の強さや、相手に寄せたり相手を追ったりするスピードがあり、クローザーの仕事もできる。そして、松木選手は最前線の激戦エリアでスペースを見つけ続け、走り続けるプレーに特徴がある。相手のボールを追いかける献身性も非常に高い。
それぞれが、試合で実際に表現できるレベルの武器を持っている。その武器で相手に対抗できる。なので、選手が交代しても戦力が落ちてしまうことがないのだと思う。
何試合かを経験して、おそらくJ2でのプレーに慣れてきたのだろう。ディアマンカ選手のプレーの質が向上しつつあると思う。この試合で印象的だったプレーとしては、やはり先制点のアシストになったプレーである。左サイドに流れながらシマブク選手の縦パスを受けてボールを支配下に収める。その時、右腕でディフェンダーを押さえるが、それほどの力感はない。そして自然な感じで、するっと相手より一歩前に出て力強いドリブルに移行していった。
同じようなプレーが60:05にも見られた。やはり左サイドに流れながら金子選手からの縦パスに合流する。いわきの大西選手が横方向からプレッシャーをかけるが、なんとなくするっと前に出ると、そのままドリブルで前進していった。もちろん足が速くて体の幅もあるのでボールを奪われにくい、ということがあると思うが、相手より一歩前に出る「呼吸」を会得しているようにも見えるのだ。ディアマンカ選手・・・意外に天才肌の選手なのかもしれない。
それから22:22にルーズボールをブワニカ選手と競り合ったプレーも良かった。どちらかと言うとディアマンカ選手が遅れて競り始めているが、ブワニカ選手の前に腰をするっと滑り込ませて巧みに体を入れ替えてしまった。結果的にブワニカ選手が後ろから押す形になりファウルを取られたのだが、不利な組み手から内股を決めにいく柔道家のような体捌きだった。
その体格を活かしたパワフルなプレーが本来の持ち味だとは思うが、プレーの中にセンスある天才肌な一面を見た思いがした。初ゴールが待ち遠しい。これからも続けて注目していきたい。
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