2023年7月29日 @トランスコスモススタジアム長崎
第27節終了時点で、7位の長崎対14位の熊本の一戦。
結果としては、ホームの長崎が4-1で勝利した。
予想外の大差がついた試合だったと思う。
この両チームの対戦なら、競り合う試合になるという予想を持っていただけに意外だった。
サッカーに限らず多くのボールスポーツでは、得点しようとするアクションがあるから試合が動いているんだと思う。
もしもサッカーの試合で、両チームの選手が相手に得点させまいとして、それぞれのゴール前に11人がひと固まりになって仁王立ちしていたら、お互い勝ち点1は手に入るがとんでもない事態になるだろう。
いや、勝ち点1は手に入らないかもしれない。没収試合とかになるのだろうか?よくわからないが。
とにかく、両チームが得点を取ろうとするからサッカーは成立する。試合は動き出す。
その攻撃に対するリアクション的な動きとして守備がある。
攻撃を防御するために、また、攻撃する権利を奪い返すために守備をする。
得点を奪おうとする行為の「攻撃」がまずあって、ピッチ上の22人は動いていると思う。
サッカーの本質である「攻撃」
そのクオリティがダイレクトに試合を左右する。
この試合を観戦して、改めてそのようなことを感じてしまった。
まず、試合開始1分で長崎がいきなり先制する。
CBのヴァウド選手が熊本のクリアボールを跳ね返して、前線のファンマ選手へ届ける。
ファンマ選手はゴールに背を向けて相手DFをガードしながら、駆け上がって来た左SBの増山選手へ丁寧なパスを落とす。
小さくバウンドしているボールを捕らえた強シュートは、GKがさわれないゴール右上隅のゾーンを打ち破った。ペナルティーエリア外からの超強烈なミドルシュートだ。
このミドルシュートの弾道が素晴らしかった。
ミドルシュートは至近距離からのシュートではないので、GKの反応する時間が比較的許されている。
そのため、甘いコースのシュートならGKが左右に動いて対応する。
ゴールするためには、GKのセービングが届かないゴールマウスの四隅のゾーンへシュートすることが必要になる。
また、同時にボールスピードも求められる。
いくら四隅へボールが飛んでも、ボールスピードがゆっくりだったらGKの反応が間に合ってセービングされてしまうからだ。
ミドルシュート、ロングシュートはそれら2つの要素を高いレベルで満たせば良い結果になる。
増山選手のシュートは、その要素を完全に満たしていた。
コースもボールスピードも完璧。熊本としては致し方ない失点だった。ゴラッソだった。
2点目は5分、CKからファンマ選手がヘディングで決めた。
この得点もクオリティが高かった。
ただ単にファンマ選手の高さ、強さで奪った得点ではないと思う。
このCKの時、上の図のように長崎はニアとファー側に分かれてポジションを取る。
ボールはファー側に来るが、岡野、ヴァウド、カイオの各選手はそのボールに飛び込んで行かない。
あえてその場にステイして、マークする熊本の選手を引き付ける。
その隙にファンマ選手は後ろ方向へ膨らむ動きを取ってマークを外すと共に、ボールの落下地点に走り込む。
このような過程で、フリーのヘディングシュートを決めることに成功した。
チームで共有されたサインプレーが見事に実行された得点だった。
開始から5分で2点を奪った長崎が、完全に試合の主導権を握ることになる。
こんなに簡単に点が入ってしまうのか、と感じてしまう長崎の攻撃だった。
その後長崎は、熊本がボールを保持するとあまり無理してプレスには行かず、4-4の守備ブロックを構築することを優先するようになった。
そうなると熊本も簡単には攻略できないようになってしまう。
効果的な攻撃ができないまま、時間が経過していく。
逆に長崎は68分、2点目と同じようなCKのパターンでファンマ選手が3点目を決める。
ファンマ選手のみがボールにコンタクトできるようにデザインされたサインプレーだ。
このサインプレー、長崎はよく使うのだろうか?・・・
同じプレーで2点取るのだから、かなり有効なサインプレーだと思う。
このような試合展開になってしまうと、熊本はここから盛り返していくのは難しい。
82分には、前へ出ざるを得ない熊本の背後を取った松澤選手が左サイドをドリブル突破、カットインしてのきれいなシュートを決めた。
熊本は最終盤の87分、平川選手がペナルティーエリア外、中央からのシュートで1点を返した。
左足でやや巻き込むようにしてキックして、左ポストをかすめながら入るようなゴールだった。
長崎の1点目と同じく、GKを無力化する見事なミドルシュートである。
いくら苦しい展開であろうと、良いシュートが放たれればゴールは決まるのだ。
サッカーの本質である攻撃、その攻撃の集大成であるシュート、それらのクオリティの高さが両チームで見られた試合だったと思う。
そして、そのクオリティの高さを、より多くの頻度で実行できた長崎が快勝した試合だった。
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