2023年4月30日(日) @キングファハドインターナショナルスタジアム(サウジアラビア)
浦和レッズが準決勝の死闘に勝って、安心し過ぎたせいだと思いますが、
少しのあいだ、ACLの決勝のことを忘れていました。
DAZNの告知を見て、あわてて記憶をつなぎ直した次第です。
そんな私が言うのも何ですが、アジアのクラブチームの頂点を決めるAFCチャンピオンズリーグ、浦和レッズ対アル・ヒラルの決勝戦第1戦をDAZN観戦しました。
準決勝の全北現代戦をPK戦の末に勝ち上がった浦和レッズ、3度目の優勝が目前です。
前回大会で優勝しているアル・ヒラルを打ち破る事ができるのか、注目の一戦です。
相手のアル・ヒラルは2017年に浦和が優勝した時の決勝の相手であり、2019年に浦和が決勝で敗れた時の相手でもあります。
そんな因縁の相手との一戦は、激しく、緊張感に満ちた試合になるでしょう。
アジアのライバル国であるサウジアラビアのチームが、どのようなプレーをするのか興味がありますし、世界の大会で勝つためにはどのようなプレーが求められるのか、という点についても感じることができる試合になると思います。
【試合開始前】
スタジアムは、リヤドのキングファハドインターナショナルスタジアム。
映像の真正面、バックスタンド全域で、アル・ヒラルのユニフォームを来たサポーターが青一色の光景を作っている。
サウジアラビアの応援と言えば、白い民族衣装を来た人が集まって、試合中にコーランを唱え続けるという固定観念が自分の中にあったが、チームユニフォームを着て応援するという、良く見る応援風景だった。
(白い民族衣装の人も相当数見えましたが。)
その中で、かなりの人数の浦和サポーターが集結している。
広大なスタジアムの中で、堂々とその一角を浦和のサポーターが占めている。
これには驚いた。
サウジアラビアでの試合に、Jリーグのアウェーチームぐらいの規模のサポーターがいるのだから。
【10分】
キックオフから10分が経過した。
どちらのチームも、まずは守備を固めて入ろうとしているせいか、チャンスは生まれない。
ホームのアル・ヒラルが、ボール保持では優勢に試合を進めている。
しかし、アル・ヒラルのフォーメーションが良くわからない。
4バックの2ボランチまではわかるが、前線の選手が自由に動いているように見える。
⑨イグアロ選手と⑰マレガ選手が2トップか?
ボランチの⑦アルファラジ選手がトップ下ぐらいまで上がることもある。
中盤がダイヤモンド型の4-4-2だろうか?・・・わからない。
【13分】
アル・ヒラル、右サイドの96ミシャエウ選手が浦和の左SB⑮明本と1対1の状況になる。
ミシャエウ選手が、左に一度上体を揺らしてから右へ(ゴールライン方向へ)鋭く出るというクラシックなフェイントでライン際を突破する。
クラシックなフェイントだが体のキレがある。
DFは、ある程度動きを読んでいないと置いていかれてしまうだろう。
ミシャエウ選手はカバーリングに来たボランチ、⑲岩尾選手のチェックより先にグラウンダーのセンタリングを送る。
そんなに危ないセンタリングではなかった。
通常ならGKがキャッチ、あるいはCBがクリアするような状況だった。
しかし、GK①西川選手と㉘ショルツ選手がお見合いする形になってしまった。
誰も触らないボールが、逆サイドに詰めていた㉙アルダウサリ選手へ届いてしまう。
正確にミートしたシュートが決まってしまった。
アル・アハリ 1-0 浦和レッズ
【18分】
浦和の最終ライン、ショルツ選手から㉚興梠選手へロングフィードが通る。
興梠選手は胸トラップで⑧小泉選手へ落とす。
そのボールにチャレンジした㉘カンノ選手の出鼻をうまくかわして、小泉選手がフリーで前進。
小泉選手はアル・アハリのCB2人の頭上を越える、センス溢れるスルーパスを興梠選手に出す。
興梠選手のワントラップが少しだけ、戻ってきた⑤アルブライヒ選手に近い方向へこぼれてしまった。
そのため、アルブライヒ選手に触られてしまいシュートはうてなかった。
この場面で、ボランチ?のアルファラジ選手は高い位置まで上がっていた。
そのため、CBの前で守備をするカンノ選手をはがしたところで大きなチャンスが生まれた。
アル・アハリの中盤の守備が、カンノ選手だけになってしまう状況が結構あるのではないか?
中盤の構成員とみられる、アルファラジ選手、アルダウサリ選手、ミシャエウ選手は攻撃への比重が高いようだ。
いいボールの奪い方をして、カンノ選手の後方、あるいは横のスペースを使うことができれば浦和にも絶好機が訪れそうである。
【21分】
右サイド、浦和陣内の深いところでミシャエウ選手がボールキープ。
岩尾選手、明本選手が2人がかりで奪いに行くが、切り返しが物凄く鋭く、体勢が崩れない。
余程、体幹がしっかりしているのだろうか?
最後はルーレットでかわそうとしたところを、何とか岩尾選手が体を当てて突破は許さなかった。
【28分】
アル・アハリが最終ラインからのビルドアップでミスをする。
CBのアルブライヒ選手のパスを③伊藤選手がカット。
一気にボランチ2人とアルブライヒ選手を置き去りにしてドリブルで前進する。
前方には⑳チャン ヒョンス選手がいるだけだ。
伊藤選手はチャン ヒョンス選手に向かってドリブルしながら、同選手の足を止める。
そしてギリギリまで近づいたところで、左にいる興梠選手へラストパスを送った。
あとは興梠選手がフリーでシュートをうって決めるだけだったが、シュートのために体の向きを変えるところで足を滑らせてしまう。
絶好のチャンスを逃してしまった。
ここまで、浦和の自陣からパスをつなぐ攻撃は、アル・ヒラルの前線からのマンツーマン気味の守備と強いフィジカルによって寸断されていた。
しかし、この場面のように相手陣内でボールを奪えれば、最終ラインが丸裸になっている状況が結構ありそうだ。
その後は両チームとも決定的なチャンスを迎えることがなく、このままのスコアで前半を終了した。
【46分】
GK西川選手からビルドアップを開始する。
2トップのマレガ選手とイグアロ選手がハイプレスをかけられる位置にはいるが、形式的に寄せるだけである。
そのため、西川選手は相手2トップの間を通して、伊藤選手へパスを簡単に届ける。
伊藤選手は、これまた中途半端に寄せてきたアルダウサリ選手をあまり気にすることなく、㉑大久保選手へ同じような縦パスを通す。
この時、ボランチのカンノ選手が大久保選手をフリーにしてしまっており、あわててパスカットしようとするが間に合わない。
大久保選手にフリーで前を向かれてしまう。
大久保選手は少し前進して、最終ラインの背後へ飛び出そうとした興梠選手へのスルーパスを出したが、アルブライヒ選手にカットされてしまった。
シュートには至らなかったが、アル・ヒラルの前線から中盤にかけての守備を2本のパスで攻略することができた。
前半からアル・ヒラルの、特に中盤の守備に注目しているのだが、時々この場面のように各選手が不用意に前掛かりになってしまう傾向が見られる。
GKからのビルドアップで、下りて受けようとする浦和のボランチに、アル・ヒラルのボランチであるアルファラジ選手がマークする約束のようだが、そのマークが何というか・・非常に気のない態度に見えるのだ。
なので、アルファラジ選手のところで浦和のビルドアップをインターセプトしたり、停滞させたりということがない。
その結果、中盤の守備が実質的にカンノ選手1人になる時がある。
あとは、カンノ選手の裏や横のスペースで受けて前進すれば、最終ラインとの勝負というチャンスになる。
【49分】
右サイドの深い位置でボールを持ったミシャエウ選手が、得意の1対1を明本選手に仕掛ける。
切り返しが鬼のように安定していて力強い。
自分の体を右や左に激しく揺さぶっても、上体がブレることが全くない。
しかし、この場面では明本選手が良い対応を見せてボールを奪い取った。
この試合だけで、明本選手の守備対応の能力がワンランク上がるのではないだろうか。
ミシャエウ選手というウインガーを相手にした経験値は、非常に大きいものがあると思う。
【52分】
浦和が自陣でパスを回すが、アル・ヒラルのプレスがなかなか厳しい。
しかし、ここで前半から散見したアル・ヒラルの穴が出現する。
パスを受けた小泉選手にカンノ選手が背後からチェックに行く。
小泉選手は前を向けないので、岩尾選手にボールを落とす。
カンノ選手が小泉選手を追いかけて行ってできたスペースに、大久保選手がポジショニングしている。
アル・ヒラルには4人の中盤の選手がいるが、誰一人、大久保選手をマークできていない。
ボランチのはずのアルファラジ選手は、ここでも守備のポイントとなる重要なゾーンから離れてしまっている。なんで?
岩尾選手はダイレクトで大久保選手へパスを通す。
(このパス、もう少しスピードのあるパスだと、大久保選手がもっと余裕を持てたと思う)
あわてて戻るアルダウサリ選手が来るよりも早く、大久保選手は46分の場面と同じように興梠選手へスルーパスを出した。
しかし、ここでもアルブライヒ選手に触られて、ボールの軌道を変えられてしまう。
惜しかった、と思いながら見送るボールが、なんと、ゴールの左隅へ飛んでいく。
GKもセーブできない。
オウンゴールか?と思われたが、ポストに当たって跳ね返されてしまった。
すると、そのボールがゴールへ向かって走っていた興梠選手の前に転がってきた。
②アルブライク選手のスライディングより一瞬早く、興梠選手がゴールへ叩き込む!
アル・ヒラル 1ー1 浦和レッズ
再三起こる、アル・ヒラルの中盤空洞化現象につけこんだ浦和が、ついに同点に追いついた。
【66分】
興梠選手のパスミスからアル・ヒラルが攻撃する。
右サイドでミシャエウ選手が突破しようとするも、浦和が2人がかりのマークでそれを許さない。
ミシャエウ選手にいったんボールを戻させた浦和だったが、かわりにペナルティエリア内のマレガ選手をフリーにしてしまっている。
戻されたボールをカンノ選手が抜け目なく、マレガ選手に当てる。
ゴール左隅を狙ったシュートだったが、映像では西川選手が少し触っているように見えた。
ボールはほんの少しだけ、ゴールの枠を外れていった。
【78分】
GK西川選手からのロングボールに、99ホセ カンテ選手(後半からIN)が競り勝つ。
そのままドリブルで前進しながら、右サイドを走る②酒井選手へパス。
酒井選手はファーサイドへクロスを送るが、そのままゴールラインを割ってしまった。
カンテ選手が入ったことによって、アバウトなハイボールでもマイボールにすることができた。
【86分】
終盤に勝ち越し点を狙って攻め上がるアル・ヒラル。
右サイドでドリブルするアルダウサリ選手に、岩尾選手が後ろからチャージして押し倒してしまう。
倒れ込んだアルダウサリ選手だったが、起き上がるような体勢をとりながら足の裏で岩尾選手を蹴ってしまう。
2人が密着しているので、蹴っているのがわかりにくかったが(蹴るというより足の裏で押し返す感じ)、主審が良く見ていて一発レッドカードが出た。
これでアルダウサリ選手は第2戦への出場ができなくなった。
10人になったアル・ヒラルに勝ち越す余力はなく、試合はこのまま終了した。
浦和にしてみれば、貴重なアウェーゴールを挙げて同点で終わらせたことによって、3度目のACL優勝に一歩前進したという結果になった。
【チーム別所感:アル・ヒラル】
フィジカルとスピードで上回っている分、基本的には優勢に試合を進めることができたかと思う。
ボール保持のパーセンテージも圧倒的に高かった。
ただ、前述したように、前線から中盤にかけての守備の強度、バランスが急におかしくなってしまうことがあったと思う。
その結果、最終ラインの前で相手にフリーでボールを持たれてしまうという、4バックにとって非常に困る場面を再三作られてしまった。
ここを第2戦で修正してくるのか、それともしてこないのか、そこが注目点だと思っています。
あと、ミシャエウ選手が第1戦と同様に独力で決定機をつくれるのか、それとも浦和に対策されるのか、そこも気になるところです。
【チーム別所感:浦和レッズ】
守備時に構築する4-4-2の守備ブロックが、アル・ヒラルの攻撃に良く対応していたと思う。
しかし、ペナルティエリア内で相手選手をフリーにしてしまう場面があった。
致命的なアウェーゴールを第2戦で与えてしまうことにもなるので、ここは十分に注意したい。
あと、パスのずれも少し多かった。
悪いボールの奪われ方に直結するので、修正して欲しい。
アル・ヒラルは第2戦でどうしても得点を取る必要がある。
なので、第1戦で見せたような、前がかりになってしまうバランスの悪さが必ず出てくると思う。
そこを上手く突くことができれば、たとえ劣勢の状態であっても得点を取ることができるはずだ。
第2戦の予想だが、ミシャエウ選手の個人技で1点は取られるが、アル・ヒラルの守備の穴が第1戦以上に露見してしまい、3-1で浦和の勝利と見た。
得点を取りに来るアル・ヒラルに押し切られてしまい、先制点を奪われることがないように、粘り強く戦ってもらいたいと思う。
最後に浦和のサポーターについてだが、アウェーのリヤドに約700人が集まったそうだ。
試合中はフラッグが振られ続けており、ピッチ上の様子は所々見えていないと想像する。
また、常に声を出しながら飛び続けている状態なので、試合の様子をじっくりと観戦することは難しいだろう。
しかし、現地に飛んだサポーターは、じっくり試合を見るためにリヤドに行ったのではなく、浦和というチームをサポーターのいないスタジアムで戦わせることがないように、という一念で集結しているのだと思う。
重圧と消耗の中でプレーする選手達を、どれだけ後押ししたことでしょうか。
浦和レッズが、普段通りの力を出し切って戦ってくれた。
圧倒的なアウェーの地で、ひどいことにはならなかった。
それだけで、現地へ飛んだサポーターは安心して帰国したと思う。
超満員のホームで戦う今週末の第2戦が楽しみです。
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