2023年4月12日(水)@味の素スタジアム
現在のJ2で3位(東京)と4位(秋田)の上位対決を観戦しました。
ここまで好調な両チームですが、どのような要因があるのかに興味があります。
戦績を見てみますと共に失点が少ないです。8試合で4点。
堅い守備力を誇る両チームがどのように守るか、またどのように得点するか、非常に見ごたえのある一戦になることが予想されます。
【5分】
両チーム共にオールコートでボールへの寄せが速い、コンタクトプレーが厳しい、ということを試合が始まって実感する。
なので、お互いにプレーのつぶし合いという展開になっている。
どちらかが優勢になりチャンスを作れている、ということになっていない。
攻撃と守備が短い時間で行ったり来たりしている状況だ。
また、相手のプレッシャーが強いということもあって、ボールを持ったらとにかく前方方向へ送り込む、という場面が目立つ。
とにかく相手に負けない、プレーチャンスを与えない、という気迫を両チームに感じる。
【6分】
東京⑭マリオ エンゲルス選手が、左サイドを相手と競り合いながら突破する。
センタリングのクリアボールを拾った㉓綱島選手がミドルシュート。
相手に当たったボールを秋田GK㉛圍(かこい)選手がキャッチした。
【10分】
再びマリオ エンゲルス選手が粘り強く左サイドからセンタリングを上げる。
こぼれたボールをキープする⑱バスケス バイロン選手に秋田㉝飯尾選手がファウルする。
ペナルティエリアのすぐ外側からのアウトスイングのボールは秋田DFがクリアした。
【25分】
東京のクロスをクリアしたボールを秋田㊵青木選手が巧みなポストプレーで前方へ流す。
このボールを奪おうとした東京の選手2人がぶつかってしまい倒れてしまう。
抜け出した⑮丹羽選手が東京⑤平選手と1対1になるが、平選手が落ち着いた対応でブロックする。
【34分】
秋田⑦水谷選手が左サイドから、ふわりとしたクロスをあげる。
東京⑮千田選手がヘディングでクリアしたボールに対して、走り込んだ秋田㉒高田選手が低い弾道のボレーシュート!
枠を捉えたかというシュートを、再び千田選手がブロックした。
失点が少ないチームの対戦ということを象徴するかのような前半だった。
決定的なチャンスという場面は両チーム共になかったのではないだろうか。
どちらかと言えば、東京がキープ力で上回っていたのと、リスクのあるパスを通そうとする見返りでチャンスを演出できていたと感じた。
しかし、秋田のゴール前の守備がとにかく堅い。
4枚ー4枚、あるいは5枚ー4枚の守備ラインが、放り込まれたボールを確実に弾き出す。
選手間のバランスが悪くなり、相手にフリーな状況でポジショニングされてしまうことも無い。
相手の攻め方に応じて、守備の2ラインが適切な移動をしているように見えた。
よく「守備ブロック」という言い方をするが、まるで一つのコンクリートブロックがゴール前で微調整されながら動いているような感じだろうか。
対する東京も、秋田のロングボール主体の攻撃を2人の長身CBを中心にして良く抑えている。
また、中盤でのボールキープやパスに優位性があるため、秋田の攻撃を散発的にできていると思った。
【47分】
バイタルエリアでパスを受けた秋田の水谷選手が、最終ラインの選手のあいだを通すスルーパスを丹羽選手に送る。
丹羽選手はGKと1対1になるが、少し角度がなかったこともありGK①マテウス選手がブロックする。
【51分】
GKから繋いだボールを東京の⑧齋藤選手が上手くリンクさせて左サイドに展開する。
左サイドから㉖加藤選手がインスイングのクロス。
中央で㉙河村選手が秋田DFと空中戦の1対1。これに勝つ。
GKの前、絶妙なポイントに落とされたボールに反応した綱島選手が豪快に蹴り込んで東京が先制した。
東京ヴェルディ 1ー0 ブラウブリッツ秋田
秋田としては、今まで勝てていた空中戦で競り負け、侵入を許していなかった選手間のスペースを使われてしまった。
東京が相手ゴールに近い位置で、相手のストロングポイントに2回連続して上回った結果、生まれた得点だと思う。
【64分】
東京の右CKを秋田がヘディングでクリア。
ペナルティースポット付近にボールがこぼれる。
⑬林選手が、体勢を落として胸トラップ。その体勢を起こす力を利用しながら右足で放ったシュートが、両選手密集のすき間を抜けて右サイドネットを揺らした。
トラップからシュートの流れに一切の無駄がなかった。
【86分】
得点が欲しい秋田が攻勢に出る。
④阿部選手が右サイドからゴール前に低いクロスを送る。
中央で受けた⑱吉田選手が、右足のインサイドでトラップ。
後ろからマークに来た平選手と入れ替わるように、外へシュートコースを作る。
ゴール左側を狙ったシュートは、GKの寸前で千田選手がクリアした。
【89分】
千田選手がクリアしてゴールラインを割った流れのCK、秋田㉕藤山選手がニアに入れたボールを⑰梶谷選手がゴール前へ絶妙なフリック。
フリーで走り込んだ飯尾選手がインサイドで押し込み1点を返した。
東京ヴェルディ 2ー1 ブラウブリッツ秋田
1点を返した秋田だったが、86分のプレーで足を痛めた吉田選手が退場してしまう。
交代枠を使い切っていた秋田は以後、10人でのプレーとなってしまう。
アディショナルタイムに、秋田はGK圍選手をゴール前に上げてパワープレー(10人だが)の攻撃に出る。
ゴール前での空中戦に全振りした秋田であったが、東京は失点した時のように相手をフリーにしてしまうことはなかった。
上位同士の対戦は東京が競り勝った。
【チーム別所感:東京ヴェルディ】
試合が始まった当初は、秋田の出足の鋭さやボールへのプレッシャーにかなり苦戦すると予想した。
しかし、徐々に試合を優勢に進め2点を先制して勝利した。
ピッチ内の局所においての戦いで負けなかった、あるいは上回った、ということが優勢になれた要因だと感じた。
まずは秋田のロングボール主体の攻撃を跳ね返す最終ラインでの強さがあった。
ここで負けてしまうと失点に直結してしまう大事な局所である。
また、中盤での攻守における優位性も見受けられた。
「攻」ではボールキープの能力やルーズボールをマイボールにする能力があり、秋田の攻撃を受ける回数を減らすことができていたと思う。
齋藤選手のクイックネスの高いボール扱いは、何度も秋田のプレスを単独で攻略していたし、綱島選手と林選手にも体格の良さを活かしたボールキープや競り合いの強さがあった。
「守」では、相手のロングボールが頭の上を越えていく場面も多かったが、最終ラインに加わって、あるいはこぼれたボールに対応して秋田の攻撃を寸断していた。
CBの前に綱島選手(188cm)と林選手(181cm)という、長身の2人がいるのは大きいと思う。
この2人が相手の攻撃を防御するフィルターになってくれることで、最終ラインはある程度の余力を持ちながらプレーすることが可能になる。
また実際に、2人が第3、第4のCBになってチームを助ける場面もあった。
前線の3人、特に両翼の2人はウイングらしいプレーでチャンスを何回か創出しており、秋田DFの脅威となっていた。
東京としては攻撃の主要な形として、SBも絡めたサイド攻撃を効果的に使えていたと思う。
今日の東京の試合を見ていて、このように各ポジションでの役割を各ポジションの選手が全うできているというように感じた。
東京の各選手のキャラがしっかりと立っていた。
そのため局所での戦いで優位に立つことができ、優勢に試合を進められたのだと思う。
個人的にはMFの綱島選手に注目した。
あれだけのサイズがありながら細かいボールタッチ、ボールさばきが非常にスムーズ。
体格を活かしてゴリゴリ相手を押し退けて行く、というよりは柔軟性のあるプレーができる。
もちろん、いざという時には肉弾戦や空中戦でチームを助けることもできるだろう。
非常に魅力的な選手だな、という印象を持ちました。
次節:対 ジェフユナイテッド市原・千葉(アウェイ)
【チーム別所感:ブラウブリッツ秋田】
手数を掛けずに前線にボールを届ける。
試合開始から終了まで、この攻撃を貫いていた。
かなり攻撃方法の統一性が高い。
「サッカーは、選手の自主性にまかせた自由で多彩な攻撃が面白いんだ」という考え方がもちろんある。事実、そうだと思う。
しかし、ここまで一貫した攻撃が面白くないかと言うと、不思議とそのようには感じなかった。
サッカーの観客として面白くないのは、攻撃しているようで攻撃できていないようなサッカーだと思う。
攻撃のプランがない、実行力が伴わない等の理由で、攻撃したいのだが攻撃になっていないようなサッカー。
これは見ていて面白くないと思う。
それに対して、秋田のサッカーには明確なプランがある。攻撃を遂行するチーム全体の実行力がある。
見ている側としては「またやったぞ」「今度はどうだ」というように、少しづつ興味が増してくる。
この、徹底した攻撃方法が実を結ぶことが果たしてあるのか?という興味である。
自由で多彩な攻撃が持つ「どのような攻撃を繰り出すのか?」という興味には乏しいが、秋田のサッカーにも十分な興味を持って見続けることができた。
実際に試合の最終盤には、その攻撃方法が実を結ぶことになる。
敗色濃厚の中での1ゴールだったが、チーム全体でやっと奪ったゴールという感慨を感じた。
いや、「やっとたどり着いたゴール」というべきだろうか。
前述したように守備ブロックは非常に強固であり、入ってきたボールを跳ね返す能力、相手をフリーで侵入させない能力は高いと思った。失点が少ないのも納得がいく。
秋田の守備ブロックの場合、単純なボールを入れられて、それを一発で決められてしまうという場面は少ないのかなと思う。
あるとすれば、ボールを入れられて、そのボールについてワンアクションあった後の展開で決められてしまうパターンではないだろうか。
今日の2失点もそのような展開だった。
外から放り込まれる場合は、唐突にピンチシーンを作られてしまうわけで守備の対応は難しいと思うが、そこが整備されれば相当、秋田の守備は堅くなると思う。
再度秋田の攻撃についてだが、47分に水谷選手がショートスルーパスを東京DFの背後に送って、チャンスを演出した場面があった。
今日の東京相手には、このような攻撃を混ぜていくと有効だと感じたがどうだろうか?
ただ、そのためにはそのようなパスが出せる位置にボールを運ぶ必要がある。
それは秋田が指向するロングボール主体の攻撃とは別系統の攻撃方法になる。
今後の長いシーズンを戦う中で、秋田がどのような考えで行くのか?
ブレずに同様の攻撃方法で一貫して戦うのか?
しかし、ブレることが悪い、ということは決してないと思う。
攻撃方法は自由である。そのチームにとってベストな方法や配分を決めていけばいい。
機会があれば、今後の秋田の試合をまた観戦したいと思った。
次節:対 大宮アルディージャ(ホーム)
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