2023年3月24日(金) @国立競技場
惜しくもベスト8を逃したカタールワールドカップ以来、久しぶりのA代表戦です。
強豪国のウルグアイとの一戦。
主にディフェンスラインに新しい選手が起用されましたが、どのような内容を見せてくれるのでしょうか。
次回のワールドカップでベスト8以上の成績を残すためにも、見通しの明るいサッカーを見せてほしいところです。
【2分】
ウルグアイの攻撃を自陣ゴールライン手前で㉒瀬古選手がカット。
そのボールが⑮鎌田選手へこぼれると、斜め前にいた⑨三苫選手へパスを送る。
三笘選手は前方へゆっくりと動きながらボールを引き付けると、⑥ウガルテ選手が寄せてきた動きと入れ替わるように、急激にスピードを上げる。
そのままドリブルでペナルティーエリア手前まで進むも、最後はDF3人に囲まれてしまう。
始まってすぐ、三苫選手特有のプレーが発動された。
ウルグアイ代表の基本システムは4-3-3だが、守備の時には4-4-2のシステムに変形する。
日本はボールを保持すると、このウルグアイの3つのラインを攻略しようとパスをつなぐ。
【5分】
日本が細かいパスワークでウルグアイを崩す。パスの流れとしては
⑬守田選手→㉖伊藤選手→三苫選手→鎌田選手であった。
特に、三苫選手、鎌田選手のところはパスの出し手(守田選手)とパスの受け手(伊藤選手)以外の3人目(三苫選手)、4人目(鎌田選手)の選手がパスワークに介在している。
そのため、ウルグアイのDFが予測できていない。併せてパススピードにも反応できていない。
特に鎌田選手はフリーでボールを受けている。
しかし、なぜか前を向かずに、決めていたかのようにバックパスをしてしまいチャンスにはならなかった。
【10分】
この時間にも日本が良いパスワークを見せる。
自陣でGK㉓シュミット選手へバックパスが来る。すぐに瀬古選手へパス。
瀬古選手はやや長い縦パスを、下りてきた三苫選手へ当てる。
三苫選手は3人目の守田選手へダイレクトで落とす。
守田選手もダイレクトで、オーバーラップしていた4人目の伊藤選手へと長い縦パスを通す。
この場面も3人目、4人目を使ったパスワークでウルグアイの対応にズレを起こした。
(伊藤選手はサイドを抜ききれずにチャンスにはならなかった)
【12分】
敵陣の左サイドへ上がっていた伊藤選手が、相手中盤の「4」を構成する2人の間に上手くポジションを取りパスを受ける。
すると、相手の右SBが慌てて寄せてきた。
そのため、その背後にスペースが生まれ、そこに斜めに走り込んできた⑱浅野選手へパスが通る。
浅野選手は、おそらく逆サイドへクロスを送ろうとしたが(シュートか?)GK①ロシェ選手がゴールライン外へクリアする。
【21分】
板倉選手が、相手を背にした鎌田選手へやや長いパスを送る。
鎌田選手はダイレクトで右タッチライン沿いにいた②菅原選手へパスを通す。
板倉選手からのパスは少し浮いていたが、絶妙なタッチでコントロールされたパスを通した。
菅原選手は、相手DF2人に挟まれて走る浅野選手へ、カーブが掛かったグラウンダーのクロスをこれまたダイレクトで送る。
「最終的に浅野選手が一番先に触れるように、逆算して蹴りました」と言わんばかりの美しいクロスだった。
浅野選手はGKを抜くために、右斜めに持ち出すが、そのことで角度がなくなってしまい、シュートは惜しくも枠を外れてしまう。
この一連の攻撃は、日本の最後尾から始まっているが、シンプルに相手の守備網を打ち破る素晴らしい攻撃だった。
【27分】
中盤で板倉選手からパスを受けた⑥遠藤選手が前を向くと、いきなり相手の2人の選手の頭上を越える浮き球のスルーパスを右サイドの⑧堂安選手に送る。
堂安選手はそのまま勢いに乗り、相手左SBを振り切りセンタリング。
しかし、ボールはGKにキャッチされた。
この場面で、遠藤選手はフリーでパスを受けて、フリーでパスを出している。
ウルグアイのマークが混乱しており、遠藤選手に行くか、それとも他の選手につくか、迷ってしまっているように見える。
そうなったのは、遠藤選手のパスを受ける動きに工夫があったからだと思う。
遠藤選手は、最初からフリースペースを目指して動き出していない。
もし、素直にフリースペースへ動いてパスを呼び込んでいたとすると、おそらく後ろで待ちかまえていた相手選手の強烈なチェックを受けていたと思う。
遠藤選手は何気なく、⑮バルベルデ選手に近づき、その後ろに隠れるような位置に動いている。
パスを受けることができない場所に、わざわざ自分から動いている。
その動きのために、後方に控えるウルグアイの選手は、反射的に遠藤選手を「パスを受ける可能性が無い選手」として認識してしまったのではないだろうか。
次の瞬間、遠藤選手はスッと横移動して板倉選手のパスを呼び込んだ。
すぐにターンして前を向く。
その時には⑯オリベラ選手と⑨ロッシ選手は誰のマークにつくのか迷っているような位置におり、堂安選手は前方に走り出していた。
【28分】
最終ラインでボールを回していたウルグアイだったが、バルベルデ選手が下りてきてボールを持った。
そこへ堂安選手と鎌田選手が寄せてくる。
しかし、お互いに中途半端な寄せ方になっている。
バルベルデ選手はすかさず、2人の間を通すパスを前線の⑱ゴメス選手に送った。
悪いことにこのパスが、さらに遠藤選手と守田選手の間を通っているのだ。
つまり、1本の縦パスで4人の選手が抜かれてしまい、相手FWにボールを持たれてしまったことになる。
CBが適切に対応したので、重大なピンチにはならなかったが、まずい守り方だと思った。
【33分】
ウルグアイのサイドチェンジを伊藤選手がヘディングでクリアする。
そのボールを拾った守田選手が、上がりかけていた相手右SBの背後へ浮き球を送る。
三苫選手が簡単に相手陣地へ侵入し、フォローした遠藤選手へマイナスに折り返す。
遠藤選手は中央の鎌田選手へ縦パス。
鎌田選手はダイレクトで右サイドを上がっていた菅原選手へ展開する。
菅原選手はフォローの遠藤選手に戻す。
そこから、遠藤選手は斜め前の守田選手へパス。
守田選手はヒールで角度を少し変えて堂安選手へパス、と思ったら堂安選手はスルーして円を描くように前方へ移動する。
その間にボールは堂安選手の後ろにいた鎌田選手へ渡り、ダイレクトで堂安選手へはたく。
惜しくもシュートに持ち込めなかった堂安選手だが、粘り強くフォローの菅原選手へ戻す。
菅原選手はクロス!しかし相手DFがヘディングでクリアする。
多数の選手が関わりながら、広い範囲でボールが動いている。
この攻撃で、ウルグアイの選手は意識がボールに集中してしまったと思う。
まだ日本は攻撃を継続している。
ヘディングでクリアしたボールを受けた遠藤選手が、右サイドでフリーの堂安選手へ長いパスを送る。
堂安選手はヘディングで中央へ折り返す。
浅野選手へ通ればゴールの場面だったが、辛くもCB⑲コアテス選手がコーナーに逃げた。
非常に見ごたえのある日本の波状攻撃だった。
【39分】
ゴメス選手が、体格を活かしたドリブルで右サイドに侵入する。
そこから強引にグラウンダーのセンタリングを蹴った。
これを伊藤選手が触るが、クリアにならず、はじかれたボールが中央に流れてしまう。
そこへ走り込んだバルベルデ選手が、浮いたボールを上手く抑えてボレーシュート!
右ポストをはじいて戻ってきたところをさらにバルベルデ選手が、がら空きのゴールへ頭で押し込んだ。
日本代表0ー1ウルグアイ代表
ウルグアイが少ないチャンスをものにした。
守田選手がバルベルデ選手の近くにいたが、こぼれ球への反応で遅れを取ってしまった。
このあとは両チーム共にチャンスは作れず、前半はこのまま終了。
日本がいい攻撃を見せて優勢に試合を進めていたように思えたが、ウルグアイにリードを許すことになってしまった。
【54分】
右サイドでウルグアイが短いパスをつなぐ。
日本は守備の人員が足りているように見えるが、ウルグアイのパスの受け手に厳しいチェックができていない。
そのためボールを保持され続け、最後は⑧ペリストリ選手にゴールライン際まで侵入されてセンタリングを許してしまう。
そのセンタリングのクリアボールを受けた三苫選手が、ウルグアイのファーストディフェンスを上手くかわして自陣からドリブルを開始する。
右サイドから中央へ斜めに走り込んできた浅野選手へ縦パスを送るが、シュートは相手のチェックを受けて弱いものになってしまった。
【63分】
後半から交代で入った⑭伊東選手が、右サイドのタッチライン際でパスを受ける。
マークに来た相手をかわして、フリーで前方へドリブルで進む。
センタリングは合わなかったが伊東選手らしいプレーが見られた。
【65分】
またも伊東選手が右サイドでドリブルを開始。今度は中方向へ進む。
伊東選手と一緒に後半から入った㉑上田選手とのワンツーでペナルティーエリア内に侵入。
ウガルテ選手のボールに伸ばした足が伊東選手を引っ掛けたようになりPKを奪取した、と思われたが、VARの介入により結局PKとはならなかった。
【75分】
攻め込まれた日本だがボールを奪うと、右SBの菅原選手から伊東選手へタッチライン際を走る縦パスが送られる。
相手左SBの事前のポジショニングが悪く、伊東選手の突破を許してしまう。
伊東選手は余裕を持って、中央へセンタリング。
そこへ走っていたのが1分前に交代で入っていた⑲西村選手だった。
西村選手は丁寧に、しかし強く左足インサイドで合わせて、日本がゴール!
日本代表1ー1ウルグアイ代表
【85分】
ウルグアイのFK。
ハーフライン付近からロングボールを前線へ蹴る。
ヘディングで2回、先に触られたあとのボールがオリベラ選手に渡り、ポストプレーのような形になり⑳トーレス選手へラストパスが通る。
シュートはクロスバーを直撃して、日本は失点をまぬがれた。
このまま試合は終了。
西村選手の電撃的なゴールで1-1の引き分けに持ち込んだ。
【チーム別所感:日本代表】
前半には、時折効果的な攻撃を見せていた。
三笘選手の単独突破、SBの裏を狙ったロングパス、3人目4人目を交えたパスワーク、といった攻撃でチャンスを作れていたと思う。
しかし、なぜか時間が進むにつれて、このような効果的な攻撃が少なくなったように感じた。
日本もパスをつないで攻めようとしているのはわかる。
だが、攻撃の糸口を見い出せないまま右往左往している時間が長くなっていった、という印象だ。
先制点を取ったウルグアイが、そこから守備に重心を置いたということはあると思う。
しかし、特に後半は、もう少し相手を困らせるような攻撃が見たかった。
それでも一人ひとりの個人能力には、新しい選手も含めて、A代表ならではのレベルの高さがあったと思う。
特に伊東選手の縦への突破はさすがだった。
手詰まりになり始めていた日本の攻撃を一人で打開した感がある。
結局のところ、相手の対応を上回ることができれば攻撃が機能する。
伊東選手のプレーはそういうことだったと思う。
今日の試合から、次回のワールドカップに向けた日本代表が船出したわけである。
今後の強化には大いに期待したい。
攻撃、守備の両面で相手を上回る場面を数多く作って、終わってみれば勝利をつかんでいる。
そんな逞しい日本代表を私は見たい。
【チーム別所感:ウルグアイ代表】
今日の試合では、日本にボールを保持される時間が多かったと思う。
そして、前述した通り、日本の攻撃が停滞してしまう場面が多かった。
その理由の一つとして、ウルグアイの守備対応が良かったことがあると思う。
日本がボール保持している時、まず保持者の真正面に立って行動を制限するウルグアイの選手が必ずつく。この選手をAとする。
そして、その選手の斜め後ろあたりに別の選手が連動して守備体勢に入る。この選手をBとする。
(大体、左右の斜め後ろに2人入る)
B選手は、ボール保持者が近くの味方選手へパスが出された場合に対応できるし、A選手がかわされた時にもカバーができる。
例えば、日本のボール保持者が近くの味方選手にパスを出した場合、今度はB選手が以前のA選手のような対応をする。
そして、今度はまた別の選手がB選手の斜め後ろあたりにポジショニングする。C選手である。
こうして、A、B、C、D、・・・・・と連動して、ウルグアイの守備が動いていく。
これは、サッカーの守備の局面で繰り返される基本的な守備陣形だと思う。
この動きが、ウルグアイは徹底されていたと思う。
日本の攻撃が手詰まりになってしまうのは、このウルグアイの勤勉さに原因があるのではないか。
ブラジル、アルゼンチンといった強豪国と戦う機会が多い南米の国なので、このような守り方が伝統的に染みついているのかもしれない。
今日の試合ではウルグアイが先制点を取った。
しかしその後、自陣深くに守備ブロックを敷くようなことはせずに、主に中盤で、上記のような守備陣形を取った。
これがもし、ワールドカップのような試合だったら、自陣にベタ引きしてガチガチに守っていたかもしれない。
実際のところ、そのような守り方もできてしまう、したたかなチームだと思う。
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