2023年3月11日(土) @JITリサイクルインクスタジアム
第3節が終わり2分け1敗と勝ち星がない甲府ですが、昨季の天皇杯優勝チーム。
昇格組の藤枝には今季初の勝利を挙げたいところです。
対する藤枝は2連勝と好スタートを切りましたが、前節は完封負けを喫しています。
それだけに、この試合は藤枝らしい攻撃サッカーで得点を挙げ2連敗を阻止したいはずです。
【試合開始】
甲府はFWの99ピーターウタカ選手へのロングボールを軸に攻めるが、相手の厳しいマークになかなかボールを収められない。
藤枝は自陣からのビルドアップでパスをつないで攻めようとするが、自らのミスも目立ち、なかなか攻撃が継続できない。
開始から数分はお互いにマイボールを失う場面が目立ち、ペースをつかめない展開が続いた。
【10分】
徐々に藤枝が落ち着きを取り戻してきた。
ショートパスがリズム良くつながるようになってくる。
藤枝⑩横山が、DFラインからのくさびのパスを受け、後方からのプレッシャーをかいくぐり右サイドの㉔久保選手へ展開する。
久保選手は相手を抜き切る前に、低いライナー性のボールをGKとDFの間に送る。
しかし、逆サイドの㉗榎本選手には合わなかった。
【15分】
完全に自分たちのサッカーを取り戻した藤枝は、サイドチェンジを繰り返しながら甲府DFの抜け道を探す。
右サイド、久保選手から短い横パスを受けた⑤小笠原選手がペナルティーエリア外からシュートを撃つが枠を外れる。
【16分】
左サイドをコンビプレーで綺麗に崩してから榎本選手がセンタリングするも、中央の渡邉選手には合わず。
藤枝が小気味よいショート、ミドルパスを駆使してボールを支配する時間が続く。
例えば、ある選手がパスを受けてから、また別の選手にパスを送るまでのプレーでは、おおまかに
①トラップする ②周りを見る ③判断する ④パスを送る
と、いうようにプレーの要素を細分化できるかと思う。
藤枝の選手は、①〜③がほぼ同時にできているように見える。
なので、受ける、送る、受ける、送るのプレーに抵抗がない。相手の対応の先手を取れている。
それと、パスの出しどころである周囲の選手の動きがデザインされているのを感じる。
【27分】
藤枝GK㉛上田選手からのロングボールが小笠原選手へのスルーパスのような形になりチャンスになりかける。
上田選手は何回か味方の足元へライナーのパスを通していた。
普通は大体の方向へアバウトなロングボールを蹴ったりするのだが、上田選手からのボールは味方につながる成功パスになる確率が高い。
【37分】
ここまでは藤枝のペースで試合が進んでいた。
しかし、藤枝のハイプレスを受けてボールを奪われかけた甲府が、粘ってボールを取り返す。
すると、ちょうどカウンターのような恰好になり、そのまま攻め込む。
カウンターを受ける形なので、藤枝のDFは態勢が整っていない。
甲府⑨三平選手から、ペナルティーエリア内へ走り込んだ⑩長谷川選手へのスルーパスが通る。
長谷川選手は、ゴール前にグラウンダーのボールを折り返す。
藤枝GK上田選手がさわれない、DFもゴールを横切るボールに触れない。
一番遠いサイドに走り込んでいた山梨⑧武富選手が楽に押し込み、先制点を奪取した。
【43分】
甲府陣地のペナルティーエリア内、藤枝⑩横山選手→⑨渡邉選手→㉔久保選手とダイレクトパスで崩して久保選手がゴール至近距離でシュート!
しかし、甲府GK①河田選手がセーブする。
なおも、こぼれ球を右サイドから浮き球でファーサイドに送ると、藤枝⑮杉田選手がインサイドボレーでシュート!
これも河田選手がはじき出す。
藤枝の波状攻撃の前に河田選手が立ちはだかる。まさに守護神!
【49分】
甲府GK河田選手のゴールキックが三平選手へ飛ぶ。
三平選手がちょっとだけ触ったボールは、ほぼスルーしたような形になり、そのまま前方へ流れる。
藤枝③鈴木選手と⑤小笠原選手との真ん中に転がったボールに、甲府ピーターウタカ選手が抜け出しGKとの1対1になった。
しかしウタカ選手のシュートはコースが甘く、GK上田選手の右足にはじかれてしまう。
絶好の決定機を逃してしまった。
【63分】
藤枝GK上田選手が、ロングボールをしっかりと⑮杉田選手に届ける。
杉田選手は右サイドの久保選手に展開。
久保選手はやや中に入りながら中央に絞っていた㉗榎本選手へパス。
榎本選手はドリブルで右サイドへ斜めに進む。
この時パスを出した久保選手は中央へ走り込んでおり、2人は交差する形になる。
ペナルティーエリア内まで侵入した榎本選手が、グラウンダーの斜めパスを久保選手へ送る。
そのパスに、久保選手がGKの前で軽く合わせてゴールへ流し込む。
甲府1ー1藤枝
藤枝の同点ゴールは実に藤枝らしいゴールだったと思う。
得点の場面、甲府の4バックはしっかりとゴール前を固めていた。
ゴールを決めた久保選手は、その4バックの真ん中2人のあいだのスペースに走り込んでいる。
そのスペースは相手にしてみれば一番危険なスペースなので、もちろんDFは久保選手を厳しくマークする。
久保選手にラストパスが入りそうになったら必死にカットするだろうし、もしパスが届いて久保選手がワントラップでもしようものなら、すぐにタックルに入るだろう。
久保選手が得点するには、DFがカットできない絶妙なラストパスが入って、ダイレクトで決めるような場面しかないと思う。
しかし、そのような場面が実現された。
それは榎本選手がエリア内まで侵入して、久保選手に近い位置からラストパスを出したからだ。
当たり前のことだが、遠くからラストパスを送ろうとすれば、味方に合わせる正確性を出すのは難しい。
また、遠くからパスが来るのでDFは対応する時間ができる。
でも、榎本選手は久保選手と位置が近かった。DFがカットできない絶妙なパスを出しやすい。
インサイドで正確なピンポイントキラーパスを送れる。
なおかつDFは対応ができない。あっと思ったときにはシュートを撃たれている。
ショートパスとドリブルを混ぜながら敵陣の密集地帯を攻略していくのが、藤枝のサッカー。
そんな藤枝らしさ満載のゴールでした。
【71分】
甲府がセンターライン付近の左サイドからスローインを入れる。
浮き球のボールを甲府⑰品田選手がフリーで受ける。
藤枝⑥新井選手が慌ててマークにつこうとするが、品田選手はヘディングで⑱鳥海選手へパスを送る。
鳥海選手もそのパスをフリーで受け、前を向く。
藤枝の⑥新井選手と⑩横山選手が鳥海選手の背後からチェックに行くが、チェックより先に鳥海選手は⑩長谷川選手へスピードある縦パスを送った。
この1本の縦パスは、藤枝の③鈴木選手と⑮杉田選手のあいだを通っている。
つまり一瞬で2人を抜き去っていることになる。
パスを受けた長谷川選手は正確なトラップで前を向くと、藤枝④山田選手と1対1になる。
もう1人のCBである小笠原選手は、甲府⑪松本選手のマークについている。
山田選手のカバーはできない状況だ。
こうなるとCBとしては危険な状況下に置かれる。自分1人で守るしかないのだ。
しかも、相手から先に仕掛けられるという受け身の立場なので、非常に苦しい。
果たして、右に持ち出そうとした長谷川選手の動きに山田選手が反応した瞬間、反対の左側へボールを持ち出されてマークを外されてしまった。
右足のアウトで撃ったシュートは、GKのセーブが届かないゴール左隅のコースに決まった。
甲府2ー1藤枝
藤枝の守備の隙を見事についたゴールだった。
藤枝としては、重要な地域でのマークミスとポジショニングミスが重なり、最終ラインでの1対1を強いられてしまった。
甲府は、勝ち越しの後、選手交代枠も使いながらリードを守りに来た。
まずは自陣の守備を固めて、ボールを持ったら前線の77ジェトゥリオ選手をターゲットにする。
少ない人数で相手陣地へボールを運び、リスクは負わない。
一方の藤枝は、守備を固められ、残り時間も少なくなる中でチャンスを迎えることができない。
【91分】
アディショナルタイムに入った91分、藤枝が左サイドから放り込んだクロスが中央の㉘矢村選手に渡る。ワントラップして左足で渾身のシュート!
ゴール左隅方向への決して悪くないシュートで、てっきり劇的な同点弾だと思いました。
しかし、ここでも甲府GK河田選手が立ちはだかる。
右手一本でゴール枠外に弾き出したのだ。
結局、試合はこのままタイムアップ。
相手の隙を突く、試合運びのうまさを見せた甲府が競り勝った。
【チーム別所感:ヴァンフォーレ甲府】
今日の試合では、どちらかというと相手にペースを握られる時間が多かったように思う。
しかし、2得点とも相手の隙、乱れをスイッチにして挙げた得点だった。
もちろん、この試合だけでは何とも言えないかもしれないが、甲府は自分たちのサッカーを押し通そうとする、という感じではないし、かといって、相手のストロングポイントを消していこう、とする訳でもない。
なにか「なるようになるさ、サッカーは」と達観しているチームのようにすら感じた。
相手としては、捉えどころのないサッカーをするチームのように感じるかもしれない。
ただ、その分、相手のミスでチャンスが転がり込んできた時の切り替えの速さというか、柔軟性というようなものを発揮できるチームなのではないか。
あとは、今日のGK河田選手の活躍は凄かった。
都合4本ほどの、藤枝の決定的な得点チャンスを防いでいた。
次節:ファジアーノ岡山(アウェイ)
【チーム別所感:藤枝MYFC】
負けはしたが試合を通して、前述したような藤枝らしいサッカーを展開できていたと思う。
個人的には、このままブレることなく自分たちのサッカーを継続していって欲しい。
藤枝のサッカーは見ていて楽しいですよ。ほんとに。
ただ、多くのプレイヤーが関わりながらゴールを目指すチームスタイルのため、今日の試合のように裏を取られたり、カウンター気味の攻撃を受けることが多いのかな、と思った。
そのような非常事態にどのように対応して、いかに失点を減らすかが課題だと思う。
(しかし、チームとしては課題と思っていないかもしれません。たとえ2点取られても3点取れば勝てるので・・・)
次節:東京ヴェルディ(ホーム)
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