2023年3月11日(土) @デンカビッグスワンスタジアム
今季J1に昇格してきた新潟は、第3節まで1勝2分と好調なスタートを切っています。
コンスタントに得点できているために敗戦がありません。
終盤に追いつかれるケースが多いようですが、今日のホームの一戦では勝ち切りたいところです。
一方の川崎は、ここまで1勝1分1敗。
2017年から2022年の6年間で4度のリーグ優勝、昨季も2位と、常勝チームのイメージが定着している川崎としては今一つの成績と言えるでしょう。
負傷で離脱する選手が相次いでいる川崎は、苦しい戦いが続いています。
好調の新潟相手にどのような試合を展開するでしょうか。
【試合開始】
序盤、川崎が攻め込む場面が目立つ。
しかし、新潟は引いて守ってからのカウンターを狙う展開、という訳でもない。
新潟もボールを奪えば、低い位置からではあるが、近くの味方にパスを渡しながら地道に前進を試みる。
しかし、川崎のハイプレスが強力なため、新潟の攻撃時間が継続しない。
結果的に川崎が攻め込む時間が長くなっている。
新潟が自陣でボールを保持すると、川崎はCB以外のフィールドプレイヤー8人がボールを奪い返しに動く。ボール保持者に対して2人ぐらいの選手が寄せていくので、パスを出すコースが消されてしまう。
新潟のつなぎのパスは引っ掛けられてしまうか、ズレてしまうかのどちらかになってしまう。
川崎は高い位置でボールを奪うと、最前線には3人のFWが残っていることが多いので、そこへショートカウンターからのボールを出せれば大きなチャンスになる。
しかし、その川崎の狙いは新潟のDFラインも心得ている。川崎の3トップをフリーにすることはなく、大きなチャンスは作らせない。
ボール奪取→ショートカウンターの攻撃が無理でも、川崎は3人のMFを中心にした遅攻も強力である。
3人のMFが、周囲の状況をリサーチしながら新潟陣内でボールキープし、サイド攻撃、中央突破と多彩な攻撃を仕掛ける。
右サイド、中央、左サイドの攻撃ゾーンのバランスがとれているので、新潟のDFからすると常に守備の力点を変化、対応させる必要がある。
【9分】
新潟GK小島選手からのボールを中盤で長めのパスを上手くつなぐ。
ダイナミックなパス交換のため、川崎のプレスがかからない。
新潟⑬伊藤選手がダイレクトで、トップの⑨鈴木選手にスルーパスを通す。
鈴木選手が抜け出しかけるが、リスク管理で残っている2人のCBが決定的なチャンスにはさせない。
新潟も守り一辺倒のわけではなく、機を見ながら反撃のチャンスを窺っている。
【12分】
川崎がボール奪取から細かくボールをつなぎ、新潟の守備陣を翻弄する。
右サイドで細かいパス交換の攻撃から、大きく左サイドに展開し左SBの⑤佐々木選手がクロスを上げる。
新潟のクリアが小さくなったところを㉓マルシーニョ選手が右足インフロントでコースを狙ったシュート!枠の少し上をかすめるシュートとなった。
川崎がボールを保持すると、安定感ある攻撃が継続する。
【13分】
新潟がゴールキックからビルドアップして、⑬伊藤選手がセンターサークル付近からフリーで前進する。ペナルティーエリアの少し外から、左足ですくいあげるようなループシュートをうつ。
意表を突くシュートであり、上手い具合にキーパーの頭上を越えていったが、やや右にそれてしまう。
この場面、新潟が自陣の右サイドでパスをつないでいた時に、ボールサイドに川崎のMFの選手3人を含む5人の選手が集中していた。
そのため、その密集から脱したボールが伊藤選手に渡った時には、周囲に川崎の選手は誰もいなかった。
4-3-3システムの川崎は、特に中盤の守備は3人でピッチの横幅を守らなければならない。(実際にはウイングやSBとも連携を取るので、そうとばかり言えないが。)
システム上は、中盤の3人の脇や間のスペースを使われてしまう弱点がある。
特に、このようにプレスが外されると、その弱点が如実に表れてしまう。
【17分】
川崎の攻撃を堅い中央の守備で防いだ新潟が、自陣からの鋭い縦パスで一気にカウンター攻撃を仕掛ける。
⑪太田選手が抜け出すが、川崎の⑤佐々木選手も必死に戻り、必死に寄せる。
そのプレッシャーのため、太田選手も余裕がなくなると共に、少し難しい角度になってしまった。
川崎GKチョン ソンリョン選手も絶妙にシュートコースを消しながら距離を詰める。
シュートは頭上を抜くかと思われたが、ナイスセーブでゴールラインを割らせなかった。
【22分】
新潟の攻撃をカットして攻め上がろうとした川崎だが、自陣の危険な地域でボールを失ってしまう。
奪い返した新潟⑮渡邊選手は体勢を崩しながら、伊藤選手にボールを託す。
伊藤選手はペナルティーエリア左角付近から低い弾道のシュートをうつ。
川崎GKチョン ソンリョン選手の右手をかすめて、ボールはゴール左下隅に飛び込んだ。
新潟1-0川崎
伊藤選手はフリーでシュートをうてたが、少し距離が遠いこともあり、Jリーグの一流GKとの勝負は通常なら5分5分といったシーンかと思う。
しかし、シュートコースが良かった。左下のゴールポストぎりぎりのコース。
典型的なシュートモーションを取っているため、GKの反応準備も十分だった。(味方DFが交錯してボールが少し見にくかったかもしれないが・・・)
あのコースでなければ、GKに触られてしまっていたかもしれない。
13分のループシュートもそうだが、伊藤選手は非常に現実的で、したたかなシュートをうってくる。
シュートについて語られる時に、よく
「うってみないとわからない」
「うつことが大事」
などの言葉がうしろについてくる。
確かに、うてばDFにボールが当たってコースが変わりゴールすることがある。
また、無用なカウンターを受けないためにも、シュートで攻撃を終わらせるのはセオリーと言える。
なにより、味方のシュートはチームに勇気をもたらす。
しかし、それでもやはり、シュートは得点するためにうつものだ。
GKが、決死のダイブの最後の最後、指先に触れてでもボールを弾き出そうとするように、
シューターは、持っている技術・経験・知略の全てを注ぎ込み、ゴールを決めるためのシュートをうって欲しい、と思う。
前半の伊藤選手の2本のシュートは、そのようなシュートだった。
その後はまた、川崎優勢のペースで試合が進行する。
相変わらずCBの2人を残した8人でボールを回しながら攻めている。
しかし、新潟も守備一辺倒というわけではない。時折ボールを奪えば、川崎のプレスをかいくぐって相手ゴール前まで攻め込むシーンがあった。
【後半開始】
後半開始後すぐの47分、川崎は右サイドの非常に狭い地域で㊶家長選手、㉝宮代選手、⑬山根選手の3名がすれ違いながらパスを受け渡すような攻撃を見せる。
そのまま、ぬるぬるとゴール近くへ侵入し、最後は山根選手がシュートするが、新潟GK小島選手に防がれた。
後半も川崎の攻撃方針はブレていないようだ。
【51分】
新潟が川崎の攻撃を止めて、奪ったボールをこれまた川崎のプレスをかわして⑬伊藤選手へ渡す。
伊藤選手は右サイドを駆け上がった⑪太田選手にラストパスを送る。
太田選手がペナルティーエリア入ってすぐの右45度からうったシュートは、川崎GKチョン ソンリョン選手が右手1本でセーブする。
前半同様、時折川崎を慌てさせる攻撃を新潟は見せる。
【59分】
川崎のミスタッチから新潟が高い位置でボールを奪う。川崎はたまらずにファウルを犯す。
ペナルティーエリアすぐ外からの伊藤選手のFKはクロスバーに当たる。
【61分】
新潟が続けてチャンスをつかむ。
⑭三戸選手が抜け出して、左45度からGKと遠目の1対1のシュート。
惜しくもゴールポストのわずか右にそれてしまう。
新潟がこの時間帯にゴールを予感させるような攻撃を続けた。
【68分】
川崎がCKからすらしたボールを、ゴール前でマルシーニョ選手が決定的なヘディングシュート!
しかしGK小島選手が至近距離ではじき返す。
【72分】
新潟が中盤でボールを持つと、数人の選手間で連続してパスをつなぎゴール前まで攻め込んだ。
シュートまでには至らない攻撃だったが、パスを受けた選手が近くの、それも後方に位置する味方選手にボールを預ける「落としのパス」を効果的に使った、流れるような攻撃だった。
新潟はこの落とすパスを前半から効果的に使って、攻撃を活性化させていた。
新潟の攻撃パターンの一つである。
その後は、川崎が選手も入替えながら1点を追いかける。
80分には途中交代でプレーしていた⑳山田選手と㉚瀬川選手がワンツーで中央突破。
決定機を作るが、新潟の右サイドバック㉕藤原選手が、ここ一番で中央へ絞り込むカバーリングを見せた。
依然としてボール保持率では優位に立つが、段々と即時奪回のプレスパワーが弱まってきたのか、新潟も中盤でのボールキープや川崎のゴール前まで攻め込む場面を作る。
85分には新潟の伊藤選手がこの試合2本目のループシュートを見せる。
87分には新潟⑰ダニーロ ゴメス選手のフォアチェックから高い位置でボールを奪い、伊藤選手が決定機を迎えるが、川崎⑧橘田選手が必死に戻り追加点を防いだ。
その後、川崎は疲れからか、これまでのようなテクニカルな集団攻撃でチャンスを迎えることがなくなってしまう。
前半に奪った1点を守り切り、新潟が勝利した。
【チーム別所感:アルビレックス新潟】
試合開始直後から、川崎に押し込まれる時間帯が続いた。
これは、いずれ押し切られてしまうかなぁと思ったが、4バックの最終ラインが最後のところで耐え続けていた。
また、例えば川崎がバックパスをするタイミングなどで、最終ラインと中盤のラインがきちんと押し上げてボールを奪いに行けていたのも良かったと思う。
形式的に押し上げるだけではなく、ボールを奪うための対人プレーをしていた。
実際に、川崎のミスを誘発させたり、ボールを絡め取ったりして、攻撃する時間帯を作れていたから、あの前半の得点が生まれたのだと思う。
新潟は攻撃で前進する時に、相手の最終ラインの裏を狙って長いパスを入れたり、周囲にフォローする選手がいないまま、単独ドリブルを仕掛けてしまったりすることが少ない。
後方の選手が前線へパスを入れると、パスを受けた前線の選手は後方からフォローしてくる味方へ「落としのパス」を使う場面が目立つ。
パスを受けた後方の選手は、勢いを落とさずに良い体勢で攻撃参加することができる。
このようなパス交換を適度に入れながら前進することで、相手の守備網を攻略するために必要な人数を確保しながらボールを運んでいける。
ある程度、攻撃時の決め事としているのだろうか?特徴的な攻撃だなぁと感じた。
川崎を完封したのは大きな自信になるだろうし、特定の選手に依存していない攻撃で、ここまで毎試合得点も取れている。
第4節にして、J1で未だ負けていないチームは新潟だけ。どこまで無敗で行けるか注目したい。
次節:対 浦和レッズ(アウェイ)
【チーム別所感:川崎フロンターレ】
ショートパスを渡し合いながら、相手守備網の突破ルートを探っていく戦法(?)のチームだと思う。
まず、パスを足元の止めやすい位置に出せる。ズレがない。
トラップが正確で大きくならない、弾まない。また、トラップによって目線や頭の位置が必要以上に下がらないので、周囲を視界に収めながら次のアクションへ抵抗なく移行できる。
相手チームは川崎のパスワークを前にして、チャレンジするきっかけをなかなか得られなくなってくると思う。
短いパスを出す動作も、脚を振って蹴るというよりは、体全体の重心移動を動力源としてインサイドで弾き出す、というように見える。
そのため脚を振ったあとにできる、体勢を整える微妙なタイムラグがない感じなのだ。
相手からすれば、寄せると出される、動かれる、という感覚になってしまうのではないだろうか。
また、右サイドからの攻撃と左サイドからの攻撃が真逆なのも特徴的だ。
右サイドは短めのパス交換を重ねながら、相手との我慢くらべの末に生まれた隙を突いて突破するような攻撃が多いかと思う。
対して左サイドは、マルシーニョ選手の圧倒的なスピードで相手に我慢する暇を与えずに突破していく。
右と左とで、極端に攻撃のリズムが違うのだ。
相手の突破を想定しながら中央を閉めようとするCBは、両極端なリズムに合わせないといけないので苦労を感じると思う。
このように多彩な選手が多彩な攻撃を繰り出すチームなので、相手としては、川崎の全てに対応して上回ろうとするのは現実的ではない、と考えるのではないだろうか。
もし、そうだとすると、相手に最も重要視されるのが、ゴール前の中央の守りになると思う。
狙いが定めにくい川崎の攻撃も、結局はゴール前に収束されることが多いからだ。
それなら、川崎のCF対相手チームのCBという図式がクローズアップされてくると思う。
川崎としては、いくら中盤やサイドを支配しても、仕上げの仕事が為されなければ意味がない。
相手チームはその逆。
中盤やサイドを支配されても、仕上げの仕事をされなければOKなのだ。
現在、レアンドロ選手や小林選手がケガで出遅れているが、川崎にとっては非常に痛いはず。
今日の試合の結果は、そのようなチーム事情の影響もあったのだと思う。
次節:対 セレッソ大阪(ホーム)
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