2023年2月18日(土)@いわきグリーンフィールド
私の地元、静岡県にはJ2に3チーム、J3に1チームのプロサッカーチームがあります。
そのうち、今季J2に昇格した藤枝MYFCの、J2での初戦を映像で観戦しました。
相手は同じく昇格組のいわきFC。
J3では、いわきFCの1勝1分で直近の対戦では3-0でいわきFCが完勝しています。
昨年その試合を現地観戦しましたが、いわきFCの激しいプレスによるボール奪取と、縦への力強い攻撃が印象に残っています。
【試合開始】
まず、自分の予想に反して藤枝のプレス回避が機能している。
藤枝がボール保持した直後、いわきの選手がプレスに来るが、同時にボール保持者が容易にパスができる角度に藤枝のフォローがある。そのフォロー選手への安全パスで、いわきのプレスを一旦は外すことができる。
そうなると、いわき側は二の矢の選手が動き出すが、動き出しから間合いを詰めるわずかな時間のあいだに、藤枝側は1タッチあるいは2タッチでボールを離す。
その繰り返しで、藤枝はボール保持の時間を作っていく。
なによりもパスが正確に、適切な強さで、きっちり転がされていて、受ける側のトラップやダイレクトプレーにミスが起こりにくい。
そこにもプレス回避に成功した要因があると思う。
【6分】
藤枝の中盤で、ずれたショートパスをカットしたいわきが決定的なチャンスを迎える。
だが、藤枝③鈴木選手が斜め後ろからしぶとくプレッシャーを掛けたこともあり、いわき⑰谷村選手のシュートは枠を外れる。
【24分】
藤枝のビルドアップのパスをカットした流れから、いわき⑪有田選手がシュートを撃つ。
しかし、藤枝②川島選手が体を投げ出しギリギリでコースを変えて難を逃れる。
地道にパスをつなぎボール保持を志向する藤枝だが、上記のようなリスクが内在しているのも確か。しかしここで失点しなかったことで、その後も藤枝のペースで試合が進んでいく。
【35分】
ショートパスを左サイドでつなぐ藤枝がチャンスをうかがう。その時間を使いフィールドプレーヤーが相手陣地へ攻め上がる。
ゴール前へ入れた藤枝の横パスをいわきDFがカット。すかさずカウンターを狙って縦パスを前線に入れる。
この縦パスを押し上げていた藤枝⑮杉田選手が、インターセプトする形でダイレクトのミドルシュート!したが、芯を食わなかったボールは思いっきりスライスして飛んでいく。
そのボールがちょうど、藤枝㉔久保選手へのパスになった。
ボールの軌道が余りにも異質だったせいだろうか、一瞬ピッチ上の空気が変に止まった気がした。
しかし、いち早くゴール前ニアのポジションを取り直したのが藤枝⑨渡邉選手だった。
久保選手からのやや高めのセンタリングに、頭から飛び込むダイビングヘッドで先制点を奪取した。
【37分】
少ないタッチ数のショートパス主体の攻撃が藤枝の持ち味だが、GKやDFラインからのロングボールを使った攻撃を混ぜていたのが効果的だったと思う。
この時間、ビルドアップ中のボールを藤枝㉛上田選手(GK)が、左ウイングバックの藤枝㉗榎本選手目掛けてロングボールを飛ばす。
普通このような状況では、飛んでくるボールに対し正対して胸、またはインサイドで確実にトラップするのが基本でしょう。
しかし、榎本選手はライン際に立ちながら、自分が攻めるゴールマウスの方向を向いている。
この体勢では飛んでくるボールが見えにくいので、トラップミスをしてしまう心配があります。
だが、右足付近にボールが落下する目測を正確に取った榎本選手は、バウンドの瞬間に右足インサイド(インステップ?)でかっさらうようなトラップを平然と実行。そのかっさらった右足を一歩目にしてそのまま左サイドをダッシュ。
遅れを取ったいわきDFが追いつくタイミングで、今度は右足アウトでカットイン!
と思うと、足裏でごろっとボールを残す。
と思うと、残ったボールをフォローで駆け込んできた藤枝⑩横山選手がシュート!
リードを2-0に広げた。
このゴール、かなりすごいゴールだと思うのです。
なぜなら、ゴールへ至る過程において、相手プレイヤーの介入をほぼ許していないから。
強いて言えば榎本選手がカットインするあたりだけでしょうか。
サッカーは、自分たちの攻撃が相手の介入によって制限されるがために、得点しにくいスポーツだと言える。相手の介入が及ばないようなポジションを取ろうとしても、オフサイドというルールがそれを許さない。
実際、ゴールの多くは相手プレイヤーの介入を受けながら、それに打ち勝つ、あるいは相手の介入ミスのチャンスを活かして生まれるケースが多いと思う。
しかし、このゴールはそのようなケースを超越した素晴らしいゴールだと思う。
仮に、相手の介入を許さない攻撃パターンを確立できるとしたら・・・
そのパターンを意図的にかなりの確率で実行できるとしたら・・・
そんなことを真面目に考えてしまうようなゴールでした。
藤枝は前半終了間際にも、やはりGKからのロングボールを起点に右サイドを攻略して3点目を奪う。
藤枝にしてみれば、J2の初戦でこれ以上ないスタートを切った前半になった。
【後半開始】
3選手を交代したいわきは、明らかにギアが上がった。
ボールへの寄せ、ルーズボールへの反応、縦への推進力が前半とは違って見える。
ボールを持ったら縦方向にドリブルかパス。あまり横方向への展開はしない。
そしてボールが縦へ動くあいだに、周囲の選手が連動して縦移動していく。
5、6人の屈強な男たちがボールを囲いながら突進していく、いわきのサッカーが始まった。
【48分】
センターライン付近で激しい寄せから藤枝からボールを奪うと、2本の縦パスでゴールライン間際まで攻め込む。そこからのセンタリングに反応したいわき⑧嵯峨選手が、巧妙なヒールシュートをゴールに流し込んで1点を返す。
ボールを奪ってからが速い。とにかく速い。
2本の縦パスのあいだに、いわきの選手が絶妙な間隔でゴール方面に殺到している。
あまりの速さに藤枝の選手は全員、戻りながらのプレーになってしまっているのです。
藤枝GK上田選手から見ると、両チーム合わせて10人ぐらいの選手がゴールに突っ込んで来るように見えるはず。相当怖いと思う。
【60分】
いわきが中盤からのロビングとヘッドのつなぎでアタッキングサードへ簡単に攻め込むと、そのこぼれ球から今度は短めの縦パスのコンビネーションでゴールライン際まで突破する。そこからのセンタリングに走り込んだいわき⑰谷村選手がGKに当てながらもしぶとく押し込み、1点差に詰め寄る。
いわきは、このような縦パスのコンビネーションを多用するようです。
最初の縦パスが入った時、すでに別の選手が縦パスの受け手を追い越す勢いで走っている。
同時にゴール前にも走っている選手がいる。
こうして、縦パス→縦パス→センタリング→ゴールの速攻が決まる。
一方で相手DFは自陣へ戻りながらの守備になってしまい、基本であるチャレンジ&カバーでの守備ができないのです。
64分にも、同様の縦パス→縦パス→センタリングのパターンから決定的なチャンスを作るが、このシュートはGK上田選手がスーパーセーブで得点を防いだ。
このあとの藤枝は、重心を少し後ろに置き始めたように見えた。
両ウイングバックを下げて5バックにすると共に、両ボランチとDFラインのあいだのスペースを消す。
いわきの速攻に後手を踏まないような対策を取った?それとも押し込まれて自然にそのような陣形になったのか?
66分には藤枝④山田選手が投入される。
いわきの攻撃は、まず相手陣内にハイボールを入れることが多く、そこでの空中戦に負けると連鎖的に相手の攻撃を受け続けてしまう。しかし、空中戦に強い山田選手が入ったことで、その後いわきの攻撃のスイッチが入りにくくなったように感じた。
結局、このままのスコアで試合終了。
前半と後半で、それぞれのチームが持ち味を出し合う試合だった。
【チーム別の所感:いわきFC】
攻撃のスイッチを縦パス一本で入れてから、ゴールで終わるまでの流れをパッケージ化して、そのイメージを高いレベルで共有しているチームだと感じた。相手からすると、いつピンチになるかわからないような恐怖感があるのではないでしょうか?
もしそうだとすると、なぜ前半は思うような攻撃ができなかったのか?・・・確かに相手にポゼッションされてはいたが・・・
この日の前半のサッカーを次節でどのように修正できるかが注目です。
次節:VS 水戸ホーリーホック(アウェイ)
【チーム別の所感:藤枝】
システム上、中盤の4人が四角形を形成するようなポジショニングになる。
攻守において、この4人がどのような四角を構成するかが重要だと感じました。
この試合でも、四角が急激にコンパクトになりボールを奪うシーンがあったが、基本的には拡大しすぎないように、ある程度連携しながら動くことが大事だと思う。かと言ってまとまりすぎず、大胆に、絶えず変化する有機的な四角であって欲しいですが。
かなりの持久力が要求され、足もつるでしょう。しかしチームの鍵を握る4人だと思う。
あと、GK㉛上田選手、③鈴木選手の左足ロングボールの正確さには感銘を受けました。
次節:VS V・ファーレン長崎(ホーム)
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